第12話 不穏な影

時を同じくして。

ここは呪界。下級の妖から上級の妖、更には妖より強い、妖怪達まで、あらゆる妖が生活している。その中心街の中央にある神殿では、妖の悲鳴と物が割れる音、大きな罵声(この世界の現皇帝ヤマタノオロチの声だ。)が聞こえてきた。


神殿内 玉座の間


ヤマタノオロチは大きな声でまくし立てたる。

「あの忌々しいツクヨミが死んで早1500年、現世に繋がる暗黒点はとうに開いているのにも関わらず、我の現世への介入は未だにできておらん。」

ヤマタノオロチの罵声に従者の妖はコソッと呟く。

「『ツクヨミ』って?」

その呟きにもう1人が答える。

「伝説の守り神だよ。確か、不思議な力でこの世界を、人間の住む現世から守ってくれるって言う伝説だったはず...」

「その話を我の前でするな!」

ヤマタノオロチは2人に向かって盃を投げつける。更に、口から火を吹き出した。

「どうやらお前たちには処罰を与える必要があようだな。」

「ひっ、お、お辞め下さいヤマタノオロチ様!

どうか、どうか、」

「お呼びでしょうか。ヤマタノオロチ様。」

そこに3人の妖怪達が玉座の間に入ってきた。

3人は玉座の前に膝まづく。

「おお、四天王か。」

四天王のうちの狩衣の男が聞いた。

「恐れながら、何をなさろうとしていたのかお聞きしても?」

「ああ構わん。先刻そこの愚か者共が我の前であの忌々しいツクヨミの話をしたのでな、然るべき処罰を与えようとしていたところだ。」

2人に火を吹こうとしたところを天狗のような男が止めた。

「なんとまぁ、ですが皇帝陛下。恐れながら、

この者達はここですぐに処罰するのではなく、ここでのお話が終わりましたら、正式に裁判を開いて決める。と言うのはどうでしょうか?その方が厳正な処罰を与えることが可能になるでしょう。」

「確かにそうだな。」

「では、そうしましょうか。そこの2人、下がりなさい。」

ヤマタノオロチの賛同を聞くないなや、もう1人色白の女が2人を部屋から追い出した。」

「それで、お前達を呼んだ理由についてだが。

我はもう二度と現世に介入することはできんと従者の魔術師から言われてしまった。そこで、我の息子『酒呑童子』に現世介入に関する軍事全てを任せたいと思っている。」

「し、しかし、酒呑童子様は現世で人間に処刑されてしまっております。」

「ああ分かっておる。だが、暗黒点を通じて現世に介入した妖共から、酒呑童子のような妖力反応があったと聞いている。」

ヤマタノオロチの話に四天王は騒然となる。

「まっ、まさか。」

「そう。酒呑童子の宿主が現世に産まれていると言うことだ。そこでお前たち四天王には酒呑童子の宿主を見つけ、呪界に連れ戻して来て欲しいのだ。」

すると狩衣を着た男が力強く応える。

「おまかせ下さい!我々四天王が必ずや酒呑童子様の宿主を見つけ、この世界のさらなる繁栄を確実なものとして参ります。」






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妖の宿主 篝日 翼 @tsubasakagari

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