第2章
第10話 ルームメイト
2人を乗せた軽ワゴンは木造二階建ての建物の前で止まった。2人は車を降りる。
「え、ここが...?」
「なんつうか...その、思ってたのと違うな。」
「ボロいでしょ?」
唖然とする2人に対し、トランクから荷物を下ろしながら、吉田は答える。
「いや、陰陽道直属って言うから、もっと大きなものなのかと...」
「陰陽道直属とは言っても、寮生はほとんどいません。あとは、地方から遠征に来ている陰陽師達の宿泊施設になっています。」
「はあ、」
環那のため息まじりの声に、吉田が慌てて答える。
「で、でも、地下にあるトレーニングルームは星稜院のものよりも、高性能ですから!」
3人は施設の中に入り、中央にある階段を登り左に進むと、ある部屋の前で立ち止まった。
「こちらが、水藻さんのお部屋です。そして、その隣が須佐田くんのお部屋です。あ、あとお二人のお部屋は...」
吉田の説明が終わるより早く、泰成の部屋の扉が勢いよく開き、眼鏡の青年が飛び出してきた。その勢いで、扉が泰成の顔に直撃する。
「痛えな!おいお前!」
「あ、ごめん、今から任務だから!」
そう叫びなら、青年は階段をかけ降りていった。環那は吹き出すのを必死に堪えている。吉田は苦笑いしながら、言った。
「お二人のお部屋は、相部屋なんですよね。」
環那も慎重に扉を開ける。中に入ると、右端の壁際にそって机がツーセット、左端には2段ベッドが設置されていた。そのベッドの上段に少女が1人、雑誌を読みながら、寝転んでいた。が、環那に気付くと、ベッドを飛び降りた。
「やっほー環那。」
「え?海?!なんで、」
「なんか父さんに呼ばれた。」
途端、環那の瞳から涙が零れる。
「え?ちょ、どうしたの?」
「いやさ、京都行く時さ、海にさよならって言えなかったから。また海といられると思ったら嬉しくて...。」
「ふふ、あははは。」
「ちょっと、そこ笑うとこ?」
「ごめんごめん。なんか照れくさて。」
少しむっとした環那に向かって海は手を差し出す。
「まあ、改めてよろしく。環那。」
環那は、海の手を握り返す。
「うん!もちろん!」
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