第7話 玉藻前
「やれやれ。やはり妾の思った通りになったか。」
「環那なのか...?」
見た目は普段の環那と変わりなかった。しかし、耳と尻尾、纏っている雰囲気は明らかにいつもの環那とは違っていた。
「ん?ああ、先刻やられておった小僧か。よく聞くのじゃ。妾の名前は玉藻前じゃ。」
そう言うと玉藻前は辺り一辺の妖を薙ぎ払った。
「すっ、すげえ。」
すると、玉藻前はいきなり倒れ込む。泰成が驚き覗くといつの間にか耳と尻尾は消え、いつもの環那に戻っていた。
「んっ、痛ぇ。」
海も目を覚ましたようだ。地獄と化していた市街もいつの間にかいつもの見慣れた風景に戻っていた。泰成はほっとため息を漏らした。
「海、帰るぞ。明日から夏期講習あるしな。」
泰成の真面目な呼びかけに対し、海が反抗した。
「え?うちらこんなに頑張ったし、ボロボロなんだよ。明日くらいサボってもバチ当たんなくない?いいよね?」
「お前は気絶してただけだろうが。」
泰成が環那を抱えて、歩き出そうとした時、不意に後ろから声がした。
「おいそこの。一体どうなってる。ここに出現した暗黒点はどうした。」
見ると、1人の狩衣を着た女性が立っていた。何故かイライラしている。
「お前ら見たところ陰陽師のようだが。」
「えーと、あんた誰?」
「お前ら、それでも陰陽師か?十二天将 朱雀 飛鳥柘榴だ。」
「じゅっ十二天将!?そんな階級の人がどうしてここに。」
驚く海に柘榴はイライラしながら答える。
「暗黒点の処理だ。」
泰成が首を傾げる。
「えーっと暗黒点って何?」
柘榴はため息をつく。
「お前ら、基礎も習わなかったのか?」
「暗黒点てのは現世と呪界を繋ぐゲートのようなもんだ。時々発生するんだが、ここまでの規模のものは初めてだ。まぁ問題はそれだけじゃ無さそうだが。」
そう言うと柘榴は環那を指さした。
「その女、妖だろ。渡せ、今すぐ祓う。」
泰成も食い下がる。
「ふざけんじゃねぇ。コイツは人間だ。」
「だったらどう説明する。さっきの莫大な"陰の妖力”は間違いなくそいつから出ていたものだ。」
「仮にそうだったとしても素直に、はいそうですかって、簡単に渡すと思ってんのか?」
その時、柘榴の携帯が鳴った。柘榴は画面を見ると、舌打ちをした。
「はい。飛鳥です。は?もう一度言って頂けますか?...はっ、はい。分かりました。」
柘榴は電話を切ると、2人に言った。
「これからお前らを陰陽連本部に連行する。ついてこい。」
「嫌だって言ったら?」
「その時は実力行使で連れていくまでだ。」
「へぇ。やってみろよ。」
「お前はよほどの命知らずだな。」
そう言うと柘榴は泰成に足蹴りを喰らわせた。倒れ込む泰成に海が駆け寄る。
「がはっ。こっ、コイツほんとにやりやがった。」
柘榴は環那を抱えると、海に冷たく言い放つ。
「お前も、抵抗すると、こうなるぞ。」
歩き出した柘榴のあとを、海は泰成を支えながら、追った。
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