第2話 環那の過去

数日後の放課後。委員会活動が終わり昇降口に降りてきた環那は泰成に呼び止められた。

「一緒に帰ろうぜ」

その時、後ろから海が声をかけてきた。

「環那。一緒に帰ろうって、泰成じゃん。帰ったんじゃなかったの?」

「いやあ。環那に話があってさ」

「そっか」

「じゃあまた訓練で」

「えっ、一緒に帰ろうと思ったんだけど、」

「パス。先帰るわ」

泰成はそう言うと、環那の手を引いて歩き出す。

しばらく歩くと、環那が呟いた。

「あのさ、手離してくれる?」

「あっ、悪ぃ」

泰成は慌てて手を離す。終始無言が続く。しばらくして、泰成が呟いた。

「お前、もう一度陰陽師やる気ねえの?」

泰成の問いかけに環那は歩きながら答える。

「もうやる気はない。それに、私にはもう前線で戦えるだけの妖力がないし」

「でも、無いわけじゃないんだろ?だったら後方支援でもできることは...」

「もう二度とやらないって決めたの!」

泰成の言葉を遮るように怒鳴りつけた環那はさらに続ける。

「あんなことがあったからもう二度と関わらないって決めたのに!なのに...なんであんたなんかにそんな事言われなきゃなんないのよ!幼なじみだからってそこまで言う権利なんかないんだからね!」

「環那...俺はただ...」

「ごめん、言い過ぎた。今日は先帰る」

そう言うと環那は坂道を駆け上がって行った。

「あ〜あ。環那怒っちゃったよ」

その時、泰成の後ろから声が聞こえ、後ろを見ると、海が住宅の角でニヤニヤしていた。

「う、海?!なんでいるんだよ。」

「面白そうだからつけてきた」

「面白そうだからって...尾行だぞ、それ」

泰成の言葉に耳を貸す様子もなく、海は泰成に質問をぶつける。

「環那。随分きれてたけど、あんたもしつこいね。『あんなこと』って何?」

泰成は黙り込む。

「何?言えない?苦楽を共にした幼なじみでも?」

海は残念そうにため息をつく。

「後悔しても知らないからな。」

泰成は少しずつ話し出した。

「あいつは元々優秀な陰陽師だったんだ。」

「それは私もよく知ってるよ。幼なじみだもん。どうして辞めちゃったの?理由は?」

海の問いかけに泰成は少しためらうも、思い切ったように話した。

「芽吹寮の悲劇だよ。」






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