26 直々
別当が帰ってきた。
衛士達の上司と面会があったとか。
貫之はそれとなく鎌を掛けた。
「内裏は変わり無く?」
別当は呆気なく陥落した。
「なら話が早い」と迄言った。
「移籍者じゃ、帝直々のな」
「たかが移籍でなぜそんな大事になるのです?」
「さてどこから話すかのう」別当は溜息混じりである。
「実はな...」
「はあ?レベルリオンからだと?帝は何を考えているのだ!」
「口を慎んで下さいませ。御前ではないとは言え、無礼が過ぎます」
顛末を聞いて血気盛んな実朝を、衛門が咎める。
が、彼女は去る事件の未亡人である。
衛門は鋭く話者を見やった。
「話は最後迄聞く様に」
念を押し、別当は見回す。
全てお話下さいませ──衛門が目でそう訴えている。
「遣って来るのは、藤原公任と云うレベルリオンの情報担当者じゃ。皆も彼の表の顔は知っておろう?」
「公任・・・頭中将か!彼がレベルリオンだとは資料に一言も...」
「落ち着け、鸕野皇女。レベルリオンも業平だけではない。作戦を授けるも一仕事じゃ。公任も良く肥えておる。機動に向かん。担当故に痕跡を消すのも容易かろう。それに所属はレベルリオンじゃが、レベルリオンの者ではないぞ」
不可解な言い様である。
「彼は、」
別当は読点の通りに息を継ぐ。その間は通常通りのはずだ。
「公任は、帝直属の情報官じゃ」
「直属、ですか。陪臣でない時点で既にこの国の至宝でございますね」──衛門。
「身元の保証はされてるの?」──篁。
「何故今、何故朱衛府なのか、帝は何と?」──貫之。
「全て大御神の仰せの通りに、と」
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