23 妻・万月視点
レベルリオンについて衝撃の事実が発覚し、衛士一同騒然としていたその時。
突然、耳鳴りと共にやってきたのは、闇だった。
「停電?」
「な訳無いでしょ。僕の異能空間は動力を必要としない。」
篁君に即否定される。
そして。
また突然、光が目に飛び込んできて、思わず目をつぶる。
呼吸を整えて、目を開ける。
目の前にいたのは、色無地を優雅にまとった女性。
締められた黒共帯が意味する所はただ一つ。
彼女は喪中だ。
皆が光に慣れるまで待って、女性は頭を下げる。
「先程は失礼致しました。こう迄せねば朱衛殿への侵入は叶わぬと聞いていたのです。」
侵入と聞いて実朝さんが反射的に身構える。
「私は、朱衛殿への入籍を切に願います。」
強い意志を持った目で女性が訴えた。
想定外の展開が皆に驚きをもたらす。
その目に何かを感じたか、別当が居住まいを正す。
「名前を聞こう。」
「私は、赤染衛門。大江匡衡の妻にございます。」
聞き覚えがありすぎる名前に動揺が走る。
大江匡衡──文章博士。
昨日の大学寮火災、被害者の一人。
「夫の最期について、検非違使の方からは詳しく聞かされる事はありませんでした。一説によると先の放火、犯人は異能力者とか。私で役に立つのなら、夫や私の様な人を無くす為、尽力したいと思うのです。」
「手続きの前に。幸か否か、犯人と同じく異能力者の私達は例の事件について、検非違使よりかなり多くの事を知っている。大江氏の最期を知るべきだ。せっかくここ迄来たんだ。聞いて私達の無力を知るといい。それで入籍を取り止めにするのであっても、私達は追わない。」
貫之さんは随分と自虐的な言葉を、女性に投げ掛ける。
女性は幾秒かの沈黙の後、
「はい、お願いします。」
凛とした声で返答した。
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