15 月夜
「レベルリオンの爆弾計画を手に入れた。私は、それを利用して囮を作った。」
「目的は、何?」
「大化が割れた。京が荒れる、そう貫之殿に伝えてくれ。」
紫は小式部をさらに強く引き寄せて、言った。
「ついては、朱衛殿の海外協力者名簿が欲しい。」
「私はその交換条件?」
「そう、傷付けるつもりは無いが──」
「ならお断り。」
小式部はいとも容易く拘束を抜けた。
「内部抗争に、私達の協力者を巻き込むのは許されない。」
さようなら、と帰ろうとした。
「食えんな。小式部、ここがどこだかわかるか?」
先程の短刀の切っ先が、小式部に向けられている。
「私の拠点、腹の中、だ。連れて来たからには、成果を得ねば。」
「だから帰す訳にはいかないと?ならばあなたを倒す迄。」
そう言って、小式部は異能行使にでた。
「オホエ──」
しかし、それは突如遮られた。
「綺麗な月夜だ。──クモガクレ」
紫の姿は消え、声だけが聞こえる。
紫──能力名「クモガクレ」──月の出る夜、自身を透過させる異能力者。
「先程も難儀したが、あなたの鬼は強い。そうそう当たりたいものではないのだ。故に私は傍観者に扮する。」
戦う相手を失った小式部を弄ぶかの様に、紫は小式部の拘束を繰り返し、再度彼女の襟首に優しく刃を置いた。
「闇雲に狙ったとて、刃は透過するのみ。所詮、あなたは敗者に過ぎぬのだ。」
それでも小式部は勝者の笑みを浮かべた。
「確かに、私にあなたは見えなければ、倒すこともできない。でも、彼等はどうかしら?──オホエヤマ!」
彼女の体が発光して、両脇の空間が歪んだ。
そしてその歪みから鬼が一人、二人、三人・・・。
彼らは、獲物を見つけ、群がった。
獲物とは──、
「なっ、何故!」
鬼は紫を押し倒し、紫は悲鳴を上げた、敗者のように。
「人ならざる者には人には見えない物が見える。」
小式部は淡々と述べた。
「さようなら、御機嫌よう。」
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