14 声・万月視点

実朝さんの一報の直後から、朱衛殿は文字通り、フル稼働していた。

通信機は各班一つ。

それの持ち主は今、実朝さんだ。

小式部ちゃんの転送の直前、実朝さんは予備の集音機を彼女に持たせる事に成功したらしい。

もちろん電源はまだ入れてないし、通信機能はない、と実朝さんは言ったのだが──、

「これだ。友兄、何分かかる?」

「二分くれ、貫之。」




しかし──。

『やぁ。衛士諸君。』

二分も経たない内に、集音機から声が聞こえてきた。

けれどもそれは、小式部ちゃんの声ではなかった。

『私は紫。私の用は、ささやかな伝言と警告だ。では。』

良い知らせ、ではなかった。

でも、貫之さんの顔には笑みが広がっていた。


「一つ、分かったことを教えよう。小式部ちゃんは、無傷で帰ってくる。」

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