11 空間・万月視点
突然、友則さんが私と篁君の手を掴んだ。
そのまま歩き始める。
方向は──壁。
壁?このままだと衝突する!
篁君が小さく息をついて、「ウナバラ」と呟いた。
手を繋いだ私達三人は壁をすり抜けた!
脳内絶賛混乱中の私に、篁君より新情報。
「僕の異能は空間操縦。こんなの朝飯前、いや起床前だよ。この殿舎も僕の異能空間なんだもの。」
成程。
先刻迄いた洋間とは異なり、壁を抜けたこの部屋は電子機器で一杯だ。
友則さんは、その中の一つに持っていた通信機を差し込んだ。
そして、
「通信が入ったら呼んで欲しい。」
有無を言わせず奥の部屋に引っ込んでしまった。
やる事が、無い。
結局、私はまた篁君の蘊蓄に、今度は日が傾くまで付き合わされる事になった。
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