7 父・万月視点

一時間続いたパーティーの後。

私は篁君と小式部ちゃんに囲まれた。


「ねぇ、東伊里って人知ってる?親戚?」

「父です。」

「やっぱり!」

「えっ?」


小式部ちゃんが教えてくれた。

「万月さんのお父さん、伊里さんはね、朱衛殿の衛士だったの。それはそれは優秀な異能力者だったわ。」

「お姉さんの『青舎人』と、伊里さんの『鈍舎人』があまりにも似てたから・・・。お姉さんと伊里さんの話、聞きたいな。」


私は、父との思い出や、父が残した謎の言葉のことなど、 二人にいろいろ話して聞かせた。

もちろん、今日の話も。




「なるほどね。君の異能は伊里さんから継いだものだったのか。」

いつのまにか貫之さんがやってきて、言った。

「基本的に、異能は一代限りのものだ。だけど、稀に世襲制のものもあるっていうのは聞いたことがある。それが、君や伊里さんの異能『舎人』だよ。主が違うから、色は違うみたいだけどね。」

「僕知ってるよ!この前、帝に奏上された歌。青空と舎人の歌だよね?」

「伊里さんも舎人の歌を詠んでらしたはずよ。確か、喪中の舎人を詠んだ歌だったわ。」

「『舎人』も、僕たちと同じように性質は詠んだ歌で決まるってわけだ。ところで、万月君。さっきの話で質問があるんだけど。」

「はい、どうぞ。」

「内舎人は見なかったけど、大工は見たんだったよね。何人くらい?」

「一人です。」

「何色の服着てた?」

「醒めるような紅色でしたけれど。」

全員の顔が青褪めるのが分かった。




「発火まで、あと四十九時間...」

道真別当が私の後ろで確かにそうつぶやいた。

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