6 ようこそ・万月視点
「おっと、まだ名前を言って無かったね。僕の名前は、紀貫之。で、こっちのお兄さんは、実朝君。怖いけどいい人だよ」
「さっきはすまんかったな。」
隣で貫之さんが、ね?いい人でしょ?とか何とか言っているけれど、無視しましょう...
そういえば、私もまだ名乗っていません。
「東万月です」
「お父さんはお気の毒だったね」
なぜこの人が知ってるの...?
「何者ですか?あなた方は」
「もうすぐ分かるよ。ほら」
目の前に威厳のある観音開き。
二人が戸を手前に引く。
「ようこそ、朱衛殿へ」
書き物でもするのか、戸の向こうは煌々と輝いている。
最低限の明かりしか灯されていない廊下とは大違いである。
足を踏み入れた、其の部屋の中央に四人の人間。
「皆に、新しい仲間を紹介しよう」
え...?
「東万月君だ。装置で見てたと思うけど、『舎人』の使い手だ」
「無理です!私は異能力者ではありません。京を衛る事はでき無い!」
「知らんかったのか。万月君、君が持つ『青舎人』は極めて希少な異能。是非衛士になって欲しいのじゃ」
老人が奥の部屋から出てきて、私に語りかけました。
「お父さんに聞いたのかな?君には、朱衛殿や異能について、説明する必要も無いみたいだ。これから、僕の仲間を紹介しよう。彼らは全員、異能力者だ」
すっと一番端の女君が前へ出た。
白の女君!
「私は鸕野讃良。君だったのか、今朝私を尾行してたのは」
気づかれていたのですか。
だったら、何故其の場で咎め無かったのでしょうか?
「実朝君とかには情報が回ってなくて、申し訳無い事をしたけど。実はね、今日、君が来る事は、予め知らされていた事だったんだ。未来予知能力者の別当によってね。今日の出来事は全て、僕と別当が仕組んだんだ。君を僕たちの仲間にする為に」
「わしが朱衛殿別当の道真じゃ。ついでに言うと、わしの横に突っ立っとるのは友則で、其の隣は小式部、このちっこいのが篁じゃ」
友則さんと目が合いました。慌ててお辞儀をします。
貫之さんが辺りを見回して、言いました。
「と、云う事だ。改めて聞こう。僕たちの仲間に、なってくれるかな?」
父の言葉が脳裏に蘇りました。
『力を授けられた者は其の責任を果たさなければならない』
答えは決まっています。
「不束者ですが、宜しくお願い致します」
どこからか飲み物がやって来て、パーティーが始まりました。
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