5 男・実朝視点

大体今日だって、あいつ等のせいで完徹しかけてやっと寝付けたってのに、今度は侵入者だって?

少しは寝かせろ、この無礼者。

向こうは一人。

対するは俺一人で十分。


「ここを侵した事を一刀で後悔させてやる」


あいつか、侵入者は。えらく腰抜けだな。

まぁいい、気絶したら外へ運び上げておいてやる。

ここへ来るからには懐刀くらいは持って来ているはず。

だが、もう遅い。

狙うは奴の急所。

命は奪わないまでも、当分の間の動きは封じさせてもらう。

望まぬと言うのなら、俺の竹刀を受け止めてみせるがいい...




...遮られた?

人の形をしているが青いな。

人外なるものか。

竹刀に太刀を食い込ませるとは、強い!

こいつの異能はこれか?

まだ年端もゆかぬのに、この力は完成している。

これは予想外だ。

しかし!

敵が武術を心得ている事を考えて、この竹刀は直刀仕込み。

いざ、

「尋常に勝負!」




男は仲間を、青い何かは主人を賭けて斬り合った。

視界の端では標的である少女が怯えていた。

地下に鉄と鉄の音が響く。




「ほらそこ、喧嘩しない!」

斬り合いの中に素手で割り込むとは。

相変わらず妙に度胸あるな、之兄。


「刀をおろして、実朝君。応接間にお通しするよ」




之兄なる男は青い何かに向き直った。

「刀を下ろして欲しいんだ。僕たちはあなた方を歓迎します」

変化なし。

「僕等は敵じゃあ無い。どうしても出来無いと云うのなら...」

彼の瞳が緑色になった。

「おうちへ帰ってくれるかな?」

彼ににらまれた何かは、ぼうっと霞んで主の元に戻っていった。




「お嬢さん、見苦しい所見せちゃったね、怪我は無い?」

「はい」

「君の名前は東万月、であってるよね?」

「はい」

「皆が君をお待ちかねだ。付いて来て」

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