4 ベル2

依然、万月はあの白の女君を追いかけている。




見失ったのであろう、彼女は朱雀門で足を止めた。

白の女君。

身なりからして女官とは思えず、朱雀門から大内裏へ入った様子もない。

他に道と言えば二条ぐらいしかないのである。

一縷の期待を持って二条大路を見渡す万月であったが、その結果は彼女の顔で明らかであった。

では一体どこに行ったというのか。

万月はあてもなく、門前に腰を下ろした。




突然万月の下の地面が崩れた。

いや、口を開けたと言って間違いないだろう。

彼女は地面に食べられた。

そして落ちた。


薄暗い空間。

彼女の目の前には、やけに貫禄のある赤い円柱があった。

朱雀門の足である。

地下である、万月はそう判断した。

理由は、考える暇もなかった。




ジリリリリリリリリ...

地下にベルがこだまする。




警報である。

自分は侵入者なのだと、万月は知った。

しかし、うろたえている場合ではなかった。


誰かがくる。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る