2 青・万月視点

私は東万月、十五歳。

只今ある人物を尾行中。

中納言家の一人娘がなぜ郊外で尾行などしているのか?

まぁ、細かいことは気にしないで欲しい。




── 一刻前 ──

秋。

外出する者にとってうれしい気候でありながら、秋の除目を目前にしてクーデターが多発する、所謂治安の悪い季節。

昨夜もこの場所でクーデターが一つ鎮圧されたとか。

今朝まで荒れた戦場の復元が行われていたらしい。

道中、工具を持った大工らしき男が帰路につこうとしていた。


にしても、白いな。

大工ができうる限りの修繕を施してもここまできれいにはならない。

それに大工には会ったけど、清掃要員として送り込まれるはずの内舎人たちにまだ会っていない。

あ、舎人といえば...

もしかして異能?


父に聞いたことがある。

この前──私の詠んだ歌が帝の御前で奏上されると決まった時...


「朱衛殿という組織を知っているか?彼らは、異能という力を持ち、お前たちを、京を、今日も衛っている。お前を含めて、人とは違う力を授けられた者はその責任を果たさなければならない。万月、私はお前を誇りに思うぞ・・・。」

その時、私ではない何かが体をめぐった──そんな気がした。

「私の時は鈍色だったが、お前のはおそらく青色。いい色だ。」

よくわからなかったけれど、それ以来、私の袴はいつも青色だ。


と、そこまで思い出した時、視界の端に何かを捕らえた。

上下真っ白の女君。


なんか不自然...

もしかしたら、もしかするとだけど、彼女が異能力 者っていう可能性だってないことはないよね?




万月は尾行を開始した。

万月の歌が奏上された後、満足そうに黄泉の国へ旅立っていった父の残した、最後の謎の、答えを求めて。

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