第42話 パズル
実はエリックの捜索も以前から始めていた。
最後に見かけられたのは屋敷から少し離れた思い出の桟橋だった。
その近くに住むおじいさんがエリックが行方不明になった当日、久しぶりに見かけたと言っていたそうだ。
エリックはまだあそこに通っていたのね。
私が忘れようと努めたあそこに。
でもその日を境にエリックの消息はぷっつりと途切れた。
マティアス様との話を知る人は表立って口には出さないが、みんな陰では噂をしている。
エリックは川に身を投げたのだろうと。
でも私は信じない、信じたくない。
だから探した、エリックを。
四方八方その字のごとく有りとあらゆる所を探し回った。
たとえ探すための費用が嵩もうと、苦しみ続けた弟への罪滅ぼしはそれだけでは足りない。
だけれど、金の問題では無いと理性が言うが、現実として資金が続く自信がない。
今までエリックの捜索のため海外にも調査の手を伸ばした。
自殺、家出、事故、誘拐、あらゆる可能性を踏まえて。
それに加えてお父様達の捜索。
それらに費やす為、私はかなりの財産を手放した。
そして今ライザー家を清算する為、おそらく全てを無くすだろう。
……かまわない、それで全てを失おうとも私は成すべき事をするだけ。
そんな混乱の最中のある日、久しぶりにお母様からの手紙が届いた。
『Dear シルビア
連絡が滞ってごめんなさい。
暫く気がかりな事が有り、手紙を書くことが出来ませんでした。
でも心配ありません、私の具合が悪いのではないのです。
愚痴になってしまうかもしれませんが聞いてくれますか?
つい最近、近くの港でエリックそっくりの子に会ったのです。
本人と勘違いするほどよく似ている子でした。
その子は海軍に所属しているようで立派な軍服を着ていました。
その時点でエリックでは無いと分かるはずなのに、気が動転していた私は思わずエリックの名を呼び駆け寄ってしまいました。
しかしそれも人違いでした。
その子はマシュー・ギランと名乗っていて、一緒にいた方の一人は旦那様、もう一人の人はその子の従兄弟だったのです。
最初はそれを疑った私ですが、数年前に撮ったであろう写真を見せられ、ようやく納得しました。
この子はエリックでは無いと。
それでは私のエリックは今どこに……。
それを思うと薄れかけていた悲しみに襲われ、人前であるにもかかわらず泣いてしまいました。
その時借りたハンカチは返さず仕舞いで、今私の手元に有ります。
そのハンカチに綺麗に刺繍された紋章は、侯爵家であるギラン家の物に間違いありませんでした。
ねえシルビア、私達はまたいつかエリックに会えるのでしょうか。
もし、エリックの事が少しでも分かったなら、必ず知らせて下さい。
たとえ小さな事でも構いません。
お願いします』
エリックに似た子?
軍?
ギラン?
えっ、ちょっと待って、それって……。
ここのところ目の前にちらついているピースが有った。
それは、そのまま見逃してしまほどの小さな欠片。
だけど何故か妙に頭の片隅に引っかかっていたのだ。
それが母からの手紙により記憶の中から引っ張り出され、また新たな情報と言うピースが追加された。
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短くてすいません、出来たらまた今夜投稿の予定………です。
出来ればいいなぁ………。
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