第36話 マティアス
短いです。
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また月が変わった。
私はシャルルを得て、毎日幸せな日々を過ごしている。
仕事もすこぶる順調だ。
シャルルは日を追うごとに、美しくなっていく。
私を呼ぶ声の、なんて涼やかな事か。
何度体を重ねても、飽きることが無い。
だが、その幸せは、一人の哀れな少年の犠牲の上に有ると言う事を私達は忘れてはいけない。
「マティアス様、あの……」
「シャルルか、おいで」
そう言って私は手を差し出す。
彼は素直にその手を取り、窓辺の椅子で海を見ていた私の膝に乗る。
「エリック君の事でしょう?」
「はい…」
「私も手は尽くして探させています。でもまだ有力な情報はありません」
「そうですか…」
「シャルル、そんな顔をしないでおくれ。絶対にエリック君を探し出してみせるから。そして、私はできる限り彼の力になるつもりです」
「……ごめんなさい」
そうシャルルが呟く。
シャルルが謝る必要など微塵も無い。
私達が出会ったのは幸になる為のはずだ。
運命の番とは、そういう物のはず。
今のエリック君の問題は、きっと神が私たちの幸せの代償に与えた試練だと思う。
「心配しなくても大丈夫です、彼はきっと見つかるでしょう」
「僕にもエリックさんの為に、何かお手伝いが出来ないでしょうか」
シャルルが私を真直ぐ見つめ、問いかける。
「彼を探す為にあちこちに手を打ってあります。もしマシュー君が見つかったなら、私は彼が暮らしていけるよう手を貸すつもりです。シャルルがそう心配しなくても大丈夫ですよ」
そう言って、シャルルの頬を撫でそっと口づけた。
もしマシュー君が見つかったのなら、小さな家でも与え金を援助してもいいし、勤め先を紹介してもいい。
それともどこかの貴族かαのところに嫁がせてもいいだろう。
没落貴族のΩである彼には願っても無い話のはずだ。
私のシャルルには及ばないが、彼はそう悪い容姿をしていなかったし、きっと誰かが引き取ってくれるだろう。
とにかくそれは彼が見つかってからの話だ、今はシャルルとこの幸せな時間を過ごす事のほうが大切だ。
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今夜また投稿します、ごめんなさい。
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