第28話 浅はかな者達 1

内容に株、証券、会社組織他出て来ますが、

勉強不足のため矛盾する部分もあると思います。大変申し訳ございません。



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実家に行くなど、一体何年ぶりだろう。

ある日突然、疎遠になっていた弟達から助けを求める連絡が来た。

弟はあまり詳しい事は話そうとしなかったが、その少ない情報だけでも内容は酷いものだった。

どうしてこうも滅茶苦茶になってから連絡をしてくるの。



こんな腐った家など潰れてしまえと何度思った事だろう。

私はとうに家を捨て、あまり連絡も取らず自分一人で生活をしていた。

しかし事情が変わった。

一番下の弟のエリックが婚約をしたという話は耳にしていた。

これであの子も幸せになるだろうと安堵した。

けれど私は迂闊にもそのままエリックの事を捨ておいてしまったのだ。


それから4か月ほど経ったある日、エリックの婚約が破談になったと連絡があり、その上エリックが行方不明になっている事を知らされた。

おまけに、それが切っ掛けでエリックの婚約者であったワロキエ家からの融資が断られたと。

弟は、全て行方不明になったエリックのせいだと罵り、この状況を何とかしてくれと騒いでいる。

何を馬鹿な事を言っているのだろう。

私は既に家を捨てた。

その覚悟が有ったからこそ、家との連絡を絶ち、援助すら求めた事など無かったと言うのに。

そんな弟達の話など捨てておいても良かったのだ。

しかし、行方不明になったエリックの帰ってくる場所を残しておかなければならない。

そうしなければ、か弱いエリックが帰る場所が無くなってしまう。

だから私は家へと足を向ける事にした。



弟を問い詰め聞き出した話では、破棄の理由はマティアス様に運命の番が現れた事が破談の直接の原因らしい。

ならばエリックには何の落ち度もない。

その理由が仕方ない事とは言え、我が家に誹が有るなどおかしいだろう。

相変わらず弟達は、いなくなったエリックを責めるだけで、

行方不明になった弟の事を心配する様子すらない。

それでも兄弟なの?

エリックは、きっと傷付いているはずだ。

傷つき将来を悲観し姿を消した可能性も高い。

しかしマティアス様と出かけた先での出来事で、そのまま姿を消したエリックは何も持ちだした様子が無いらしい。

それはモーガンにも確認した。

何も言わず、何の準備もせずに姿を消したあの子は一体どこに……。

最悪の事も考えられる。

しかし家を見捨て、ここを出た後何も関わらなかった私は弟たちと同罪、弟を責める権利など無いのかもしれない。


それにしてもマティアス様に融資を打ち切られるなど、一体何が有ったの。

とにかく正確な経緯を聞かねば、迂闊な事は出来ない。

まあ弟たちの事だ、またとんでもない事を仕出かしたに決まっている。

しかしこんな状況なのに、父も母も顔を出さないのはどうしてかしら。


「奥様は行き先を告げず家を出られました。旦那様は…そのことがショックだったのか、お部屋に閉じこもられたままで…。」


そう答えたのは執事のモーガンではなく、新たに雇われた者らしい。

しかしお母様が出ていかられた………、ようやく気が付かれたみたいね。

お母様はいつも分け隔てなく私達を愛していると仰っていたけれど、私には分かっていた。

自分と同じΩのエリックの事を誰よりも気に掛けていたとを。

お父様や私達の手前、エリックを軽んじるようなふりをしていたけれど、目は絶えずあの子の事を追っていた。

お父様達はエリックがΩと知った途端、手のひらを返したようにぞんざいに扱うようになった。

お母様も同じΩだと言うのに。



「それで、あなた達はこの先どうするつもりなの。」


「いや、一応姉上に伺いを立ててからと思って……。」


「私はこの家を出た身よ、手を貸さないとは言わないけれど、

自分の事は自分達がまず率先して考えるべきでしょう。

大体この状態になって、どれほど時間が経ったの」


立ち話もなんだからと応接間に場所を移す。


「では嘘は無し、包み隠さず、全て教えてちょうだい。

まず、エリックはいついなくなったの?」


「た、確か…6月だったと…。」


「何ですって、6月?

私は、はっきりした日付を聞きたいのだけれど。」


「たしか、6月の20日はマティアス様がいらした日だから、その前…、15日頃だと…。」


「6月の15日からエリックは家に帰っていないの?」


「そんな事を言われても、はっきりとした事は覚えていないんだ。

しょうが無いだろ。」


「しょうがないって……、自分の弟の事でしょう!心配じゃないの!?」


兄弟が一人消えているんだ。

心配もせずそんなに無関心な言い方をするなんて。


「だが姉上、エリックの事などどうでもいいじゃないか。

来ていただいたのは、うちの会社の事だ。姉上なら何とか出来るだろう?」


「そ、そうだとも。ワロキエ侯爵からの融資を打ち切られ、首が回らなくなった我社の事を相談したくて、わざわざ来てもらったんだから」


エリックの事より、自社の利益しか頭に無いのか。

おまけにこんな時ばかり、人を担ぎ出す。

なんて弟達だろう。

これでもαなのか。情けない。

そのくせ、プライドだけは人一倍高いと来ているのだから。

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