第14話 大切な人達
※12話、マシューのセカンドネームを訂正しました。マシュー・エイムズです。
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僕にとって大切だと思える人がたくさん出来た。
従兄弟となったのジーク兄様、お父様にお母様、お兄様。
そして僕の大切な伴侶、アダム様。
みんな僕に過ぎた人達だけど、でも僕を大事に思ってくれている。
「マシュー君、感慨にふけっているようで申し訳ありませんが、それだけでは無いのはお分かりですか?」
「はい?まだ何か…と言うか、僕に親しい呼び方を求めるならば、ジークフリードさんもそんなに丁寧な話し方を…やめてほしい…です」
前からとても丁寧な言葉で僕に話しかけるので、すごく気になっていたんです。
「マシュー君、私の事はジーク兄様と呼ぶ約束でしょ?それとあなたへの言葉づかいですが、私の話し方は元々こんなものですし、それに私の上司である少将殿の運命の番であるあなたに、ぞんざいな話し方などしたら後でどんな目に遭わされるか……」
「アダム様はお優しい人ですよ、あなたに酷い事などしません。ね、アダム様」
僕がそう言ってアダム様の顔を見上げると、なぜかアダム様が目を逸らした。
「まあそれはさて置き次の話です。マシュー君、家族が出来たと言う事は、それに連なる親戚もできると言う事です。取り合えず近い身内、例えば我が家の家族や少将殿のご家族にはあなたの事を既に知らせてあります。」
僕の事が知れ渡るとアダム様が迷惑するから仮の家族を作っただけなのに、そこまでする必要は無いんじゃないかな。
「あなたが今考えていらっしゃる事は想像が付きますが、これは私達が楽しんでやっている事です。特に少将殿がね。あなたが気に病む事など無いのですよ」
「えっ、こんな厄介な事が楽しいのですか?」
「楽しいですとも、何の変化も無いつまらない軍隊生活の中に現れた、ちょっとしたスパイス…とでも言いましょうか、楽しい以外の何ものでも有りませんからね。それに少将殿など、楽しみを通り越して幸せの真っ只中なのですから。」
そんなに楽しんでいただけるのなら、僕としては何も言えません。
「マシュー、俺の家族にお前の事を伝えたら、とても喜び祝福してくれた。」
「喜んでくださったのですか?一度もお会いした事が無いのに?」
「あぁ、それと早く会いたいとも言っていたな。まあそれはどうでもいい事だが。」
「よくありません!」
アダム様のご家族、それも侯爵様のご命令なのに、お待たせする訳にはいかない。
「すぐにでも伺った方がいいですよね。でも、アダム様にはお仕事も有るし、だったら僕一人だけでもご挨拶しに……」
「まあまあマシュー君、そう慌てなくても大丈夫ですよ。何と言ってもあなた方は結婚したばかりです。蜜月の最中にそう急かすなど野暮な人などいません。
それとあなたの事は私の家族にも伝えました。私の家族をすっ飛ばして叔母に話を付ける訳にはいきませんからね。」
「はい」
アダム様の話に気は急くが、僕はたった一人では動く事が出来ない。
でも蜜月って…。
確かに僕はアダム様の事は大好きだし、アダム様も僕の事を愛しているとは言っては下さったけれど、この話は名義上の事だけだろうし、蜜月なんてあり得ないのに…。
でももしかしたら、結婚した日から一定期間をそう呼ぶのかもしれない。
「で、マシュー君。あなたの親族となった私の家族ですが、ここから30㎞ほど離れたカシニョールに住んでおります。私には父母と祖母、そして下に弟が二人おります。祖母の名はエリザベート、父はクロード母はミディア。下の二人の弟は……」
「まっ待って下さい!そういっぺんに言われても覚えきれなくて、もう少しゆっくり…」
「ですからあなたは何も覚えていなくてもいいのです。これは単なる説明だけですから」
そう言って、ジークフリードさんは話を続ける。
ただアダム様の家族については記憶喪失後に聞いた話となりますので、覚えておいた方がいいでしょうと言われ、ジークフリードさんから頂いた書類のページを見ながら、真剣に聞き必死に頭に叩き込んだ。
そして僕には大切な人がだんだん増えていった。
嬉しい半面、その人達が僕をどう思ってくれるのかとても不安だ。
アダム様やジークフリードさんの家族や親類なのだから悪い人はいないだろうけれど、それでも会うのが怖い。
出来ればこのままここで小さくなって隠れていたいのだけど、アダム様の事を考えればそうもいかないのは分かっている。
彼は地位もある偉い方なのだから。
そんな人が僕の為に色々考えて動いて下さっている。
それを無碍などに出来ない。
だから僕はとても少ない勇気を振り絞って立ち向かおうと決心した。
「そんなに不安にならなくとも大丈夫だマシュー、何が有ろうとお前の事は俺が守る」
「アダム様……」
ス、ステキです!カッコいい!その微笑みで僕はもう……。
「そう言えばマシュー君は今日から私の従兄弟ですね。そして私の事はジーク兄様と呼んでいただけるのでしょう?」
「えっ、は、はい」
「それなら私は少将殿とも義従兄弟となりますねぇ。マシュー君が私を兄と呼んでくれるなら、少将殿は私の事を何と呼んで下さるのですか?やはりジーク兄様と呼んでいただけるのでしょうか?」
「ほぅ、ジークは私からそう呼んでほしいのか?よし、呼んでやろう」
「やめて下さい、冗談ですよ」
「なんだ、つまらん」
本当にお二人は仲がいい。
「……羨ましい」
「はい? どうしましたマシュー君」
「いえ、何でも有りません」
僕にもいつか、そんな人が現れればいいのに……。
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