第12話 新しい自分
「マシュー俺のどこがいけない?言ってくれればすぐに改める。だから止めるなんて言わないでくれ。」
何故か必死な様子でそう言うアダム様。
「そんな、アダム様は完璧です。僕の方こそ出来損ないで治さなければいけない事ばかりで、どうしたらアダム様が納得できる人間になれるのか…」
「あぁ、可笑しくてたまりませんね。
少将殿、そのままでは話が堂々巡りのようですから、私からアドバイスさせていただいてもよろしいですか?
まずですね、私が思うにマシュー君が発言を撤回したのは、あなたの顔に原因があると思いますよ。」
違いますか?とでも言うように、ジークフリードさんが僕の方を見る。
「違います!アダム様はとても男らしくて、きれいで、凄くステキなお顔をしています!!」
「そうではなく、あなたの返事を聞いた時の少将殿の表情が引っかかったのでは有りませんか?」
「そ、それは……アダム様が少し怒ったような顔をした…ように感じたので、やはり僕とは結婚したくないのではと思って………」
「ち、違うマシュー。俺はマシューがあまりにも自分を卑下するような事を言うからそれが嫌だっただけだ。マシューはいつか俺に捨てられるかもしれないと思っている様だが、それは有り得ない。逆に俺の方がいつお前に愛想をつかされないかとビクビクしている。」
そんな事ないと思ったけれど、どうやらアダム様は本気のようだ。
「これはいい。多分そうだろうと思いましたがね。思わぬところであなたの弱点を拾いました。それなら私はマシュー君を味方に付ければあなたを意のままに出来るのではないですか?冗談ですよ。そんな事出来る訳無いでしょう。あなた方は共に、お互いが一番大事なのですから。」
そう言い、ジークフリードさんはゲラゲラと笑い出した。
「つまりマシュー君が結婚を撤回したのはあなたが怒ったような顔をしたのが原因なのですよ。そんなに大事ならもっと気を使ってあげたらいかがですか?」
いつの間にかアダム様の腕の中にいた僕は、じっと目を見つめられる。
「すまなかったマシュー。あんな奴に任せるべきでは無かった。こう言う事は俺が直に乞わなければいけない事だったな。」
するとおもむろに立ち上がり、アダム様は僕の足元に膝まづいた。
「ア、アダム様何を……」
慌てて立ち上がろうとする僕を引き戻し、口を開く。
「マシュー、俺の太陽。どうか俺と共に一生を送ってくれないだろうか。俺は誓うよ、生涯愛する人はお前だけだと。どんな事をしてもマシューを幸せにする。不自由はさせない。だから俺が死ぬまで一緒にいてくれないだろうか」
「嫌です」
思わずそう返してしまった。
「マ、マシュー!?」
「俺が死ぬまでって何ですか!?アダム様が死んだら僕はどうすればいいんですか!」
「それは…、俺が死んだ後も生活に困らないようにちゃんと貯えて………」
「酷いですアダム様、僕はアダム様が死んでしまったら生きて行く事なんて出来ないのに!それなのにそんな事を言うなんて……」
思わず涙があふれだす。
「バカですか貴方は…本当に残念な人ですね。そういう時はお前を一人にはしないとでも言ってお上げなさい」
「すまなかったマシュー、ど、どうか言い直させてくれ。俺は絶対にお前より先に死なない!いや、死ぬときは二人一緒だ。」
「そ、ぐすっ、それなら…します……」
「えっ…」
「します……結婚…」
そう言った途端にアダム様が慌てだした。
「ジーク、書類を!いや、こういう事は人任せにしてはいけないんだったな。いい俺がやる。」
それからアダム様は迷惑そうなジークフリードさんを尻目に、彼のカバンをあさり、中から一枚の紙を取り出した。
「マシューこれだ。ここにお前の名前を書いてくれないか?いかんフルネームだったな。お前のセカンドネームはエイムズだ。ここにマシュー・エイムズと書いてくれ。」
そう乞われるまま僕はペンを走らせた。
アダム様に付けていただいたのはファーストネームだけだったので、また知らないセカンドネームが登場しても、きっとアダム様が付けて下さったのだろうと別に抵抗は無かった。
「よし、間違い無いな。ジーク、それではすぐにこれを……いやいい、俺が出しに行って来よう」
「落ち着いて下さい少将殿。まだやらなければならない事が残っています。
それは後ほどお二人そろって役所に提出して下さい。
さてマシュー君、ご結婚おめでとうございます。」
改めてそう言われ、僕は自分の仕出かした事に気が付いた。
結婚!?だれが?僕が!?とととととんでもない。
僕がアダム様と結婚だなんて、何て恐れ多い事をしてしまったんだ!!
口をパクパクして慌てふためく僕を見てジークフリード様が微笑みながら”観念なさい、相手が悪すぎました”そう言う。
「まあ実感するまでは少々時間が必要でしょうが、それよりこれからの大切な話をしましょう。」
「大切な話…ですか?」
「はい」
大切な話って何だろう。
これ以上の大切な物はないはずなのに。
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