十二章 「うまくいかない」

 しかし、未来はそんなに簡単に変わらなかった。

 私達が結婚しても、諒の未来は変わらなかった。

 別の未来を変えてみても、死ぬと言う未来は変わらないのだろうか。

 どんな影響があるかわからないから、これ以上は他の未来を変えないことにした。

 次の手である警備会社にボディガードの依頼電話をした。

 しかし、三月二十三日だけは予約でいっぱいだった。他の警備会社に電話しても同じだった。

 ここまでくると、運命というものを感じずにはいられなかった。どんな選択も意味を成さないのだろうか。

 ダメ元でお祓いもしてもらった。

 占いにも行った。

 歴史の過去の死者に関する書物も読んだ。

 今までの人生を振り返り、何か得るものがあるかも考えてみた。

 考えられる可能性は全て試してみた。

 しかし、どれもヒントとなるものは見つからなかった。

 私達は完全に行き詰まっていた。

「もう、いいよ」

 彼の家で話し合いをしている時、突然彼はそう言いだした。

「何言ってるの?」

 私は嘘だと思いたかった。

「だって、何をしても変わらないじゃないか」

「あなたがそれを言わないでよ」

 私は怒鳴ってしまった。

「私がどれだけあなたのためにしてると思ってるの。それなのに、あなたが諦めないでよ。あなただけはそれを言わないでよ」

 諦めるという選択がどうしても私は認められなかった。確かに二人で残りの時間を大切にしようという考えも一理ある。しかし、それは諒が納得していないとダメだ。今はただ諦めているだけだ。

「僕の気持ちなんてわからないだろ」

 彼も辛そうな顔をしていた。でも私にはその理由を聞いてあげる余裕はなかった。

「どうせわかってないわよ。もう勝手にすればいいわ」

 私はそう言って部屋を出て行った。

 風がいつもより強く吹いていた。

 それから私は一人で彼が死なない方法を探し続けた。

 部屋の中で暖房もかけず、ひたすら考えたり調べたりしていた。

 確かに、彼との喧嘩の仲直りをしなければいけない。彼の話もしっかり聞いてあげたい。私自身悲しい気持ちもあった。日にちが経つごとに気まずくはなっていくものだ。

 でも、私には時間がなかった。

 まずは解決方法を見つけ、それから 彼の話を聞けばいい。

 彼が生きていなければ意味がない。

 愛してるから守りたいのだ。

 そして、私は一つの仮定にたどり着くことができた。

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