十一章 「サプライズ」

 諒に食事に誘われた。

 なんだか久しぶりだなと感じた。

 前まではよくデートもしていた。最近未来のことばかり考えていて、二人でゆっくりする時間があまりなかった。

 いつもより少しいいレストラン。ビルの高いところにそのレストランがあった。彼は紳士的にエスコートしてくれた。彼には紳士という言葉がよく似合う。

 窓からは綺麗な夜景が見える。クラシック音楽が流れている。

 こんな景色を二人で眺めることができて幸せだなあと思う。

 どんなことも彼とするから、素敵なものに変わるのだ。

 彼は私の中で特別だ。私に魔法をかけてくれる。これをもし一人見ても、そこまで感動しないだろう。

 心がゆったりとする。

 彼は私が精神的に疲れていると知って、外に連れ出してくれたのかもしれない。

 そんな気遣いにきゅんとしてしまった。

 メインディッシュが運ばれてくる時、急に音楽がクラシックからラブソングに変わった。

 私たちの席にライトが灯される。

 何が起きているのかと私はあたふたした。

 ウエイターはお盆の上にメインディッシュではなく、小さな箱を持ってきていた。

 そして、彼がそれを受け取った。

 その箱をぱかっと開け、彼は私の前で膝をついた。

「僕と結婚してください」

 ダイヤモンドの輝きは、私たちの未来の光のように感じられた。

「えっ、こんなの聞いてないよ」

「言ったら、プロポーズにならないだろ」

 彼は困っていたけど、その後で私たちは二人で笑いあった。プロポーズの時に笑いが起こるなんて、私達らしいと思った。

 しかし、指輪をはめてもらうと実感がやっと湧いてきて、「はい、よろしくお願いします」と私は涙を流した。本当に私って単純だ。

 彼と出会ってから涙を流してばかりの気がする。

 私をこんな気持ちにさせてくれるのは彼だけだ。

 彼から愛する気持ちを教えてもらった。愛される喜びも知った。

 それは幸せだったり悲しくなったりするけど、この世で一番素敵なものだ。

 彼に感謝している。

 これから先もずっと愛している。

 私は誓う。前世であなたを見つけて恋をして、現世であなたを愛して、来世でもあなたを愛すると。

 私は今この瞬間誰よりも幸せ者な気がした。

 次の日もお互いに休みだったから、両親に挨拶しに行った。お互いの両親は結婚に賛成してくれた。もちろん、彼が死ぬかもしれないことは伏せておいた。

 私は言ってもいいと言う覚悟があった。たとえうまくいかなくて、一人になったとしても彼といた時間を後悔しない。その先の人生も一生彼を思い続ける。

 次の休みの日に、婚姻届を出しに市役所に行った。

 二人で出しに行った。私達は何をするのも一緒だ。今もこれから先もずっとそうだ。

 婚姻届と左手薬指にある指輪を見つめ、これで諒と人生を共にしていくんだなと胸が熱くなった。

 その日はさらに式場見学に行った。別の日に別の式場にも見学に行く予定になっていた。

 これらすべて彼が予定を立ててくれたのだから彼は頼りになると思った。結婚は意外な一面を知れていいなあと思った。彼はもっとのんびりしてるかと思っていた。これからもっと新しい諒を知っていくんだろうなとウキウキした。

 結婚式は、一年後にした。

 つまり、諒の未来を変えられたら式を挙げることができる。

 プロポーズから目まぐるしく動いたけど、なんとか決めることができた。

たくさんの人を呼んで、盛大なものにしようとなった。

 私はピンクのカラードレスと白のウェディングドレスを着ることにした。

 今から着るのがすごく楽しみだ。

 幸せな顔をしている諒の顔を思い浮かべることができた。

 私達は未来に希望を抱いていた。

 必ず一年後を二人で迎えようと未来を信じていた。

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