八章 「僕が怒ったわけ」
未来を変えられる。
そう聞いた時、僕は過去のことを思い出していた。
僕の今までの人生は、不運なことばかりだった。
怪我をしたり事故に遭ったり、損したりとそんなことばかりだった。
未来に対して僕は諦めていた。
彼女の明るさを少し分けてほしいぐらい、僕は根暗だった。
僕は自主的に行動することをしなくなっていた。
この先の未来も、過去と同じでいいことなんてないと思っている。
自分を納得させていたのに、未来が変えられると言われて自分の心を揺らされた。
未来に期待してもいいのかなと思えた。
そんな気持ちにさせてくれるのは、やっぱりいつも彼女だった。彼女はいつも僕を変えてくれる。
僕はあの日の彼女とのことを思い返す。
まず、彼女に対して僕が今どう思っているかだ。
僕は自分の部屋で音楽を聴きながら、考えていた。
スピーカーを通して流れる音楽は綺麗な音をしている。防音設備の整った部屋を借りたから音楽は割と自由にかけられる。
一人で暮らすには広すぎるぐらいの部屋だ。
家具もそれほど置いていない。
でもなんだかこの部屋は落ち着くから気に入っている。
猫のミルはベッドの上で寝ている。
彼女の話を最後まで聞かず怒ってしまったことは反省している。
そして、彼女を傷つけてしまった。物事には取り返しのつかないこともある。その傷は今からでも癒すことはできるだろうか。
でもなんと話しかけていいかわからなかった。朝の電車でも避けるようになった。そのまま月日が経って余計に連絡しづらくなった。
彼女のことをもう一度考える。
僕は彼女に憧れを抱いている。
彼女の純粋で人を明るい気持ちにさせる性格に憧れを抱いていた。
その思いはやがて恋心に変わっていった。
僕は今までの人生不運なことばかりだった。だから、人に何かしてもらったりしても裏に何かあるんじゃないかと考えるようになっていた。
そんな僕にたいして毎日明るく笑顔で話しかけてくれた。裏表のない純粋な気持ちで話してくれた。
彼女のおかげで毎日が楽しくなった。
今では、彼女のことを毎日考えて思っている。
彼女が僕の生活の一部になっていた。
それほど彼女のことを愛している。
そして、僕は何にそんなに怒ったのだろうか。
それは自分の恋する気持ちが、否定されたように感じたからだと思う。
彼女は、最後に「諒と出会うため」と言っていた。
本当に彼女は自分のために僕の未来を変えたのだろうか。
気になっている人と恋人になりたいから僕の未来を操作をしたのだろうか。
そうだとすれば決まっている未来に向かっていただけであり、この恋には僕の意思はないということになる。恋することが決まっていたのだから。
それが悲しかった。
僕が彼女に恋したこの気持ちが彼女によって作られたものだということになるから。
僕は純粋に彼女に恋がしたかった。恋して好きになりたかった。そのつもりで彼女を思ってきた。
でも、そうじゃないと言われた気がした。
だから反発してしまった。
僕の気を引くために、毎日話しにきた。
でも、そんな面倒なやり方を選ぶだろうか。
未来がわかっていれば、楽に恋愛できたはずだ。
僕は慌てて、彼女の家へと走り出した。
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