五章 「デートからのドキッ」
「諒、おまたせー」
私達は今日初デートに来ていた。
季節も変わり涼しくなって、心地よい。
パンジーの花が咲いていて、すごくかわいい。
私はめいっぱいおしゃれしてきていた。いつもは朝スーツ姿で会うだけだから、いつもと違う私を見て諒にドキドキしてもらいたかった。
男の人はスカートが好きというから、スカート姿にした。我ながら単純な考え方だ。
「遅れたりしてないし、大丈夫だよ」
彼は笑顔でそう言ってくれた。きゅんきゅんした。
彼の私服も初めて見る。爽やかな色の七分のパーカーに少しゆったりとした綿パン。
「かっこいい」
「普通に言われると照れる」
彼は照れながら笑ってくれた。そういう素直なところも好きだ。
「好き」
思いがあふれ出して、言葉になった。気持ちが抑えられなかった。
私のピアスが風で揺れる。
「僕も萌が好きだよ。萌も思ってたよりずっとおしゃれでびっくりしたよ」
彼も好きと言ってくれて、幸せな気分になった。
「私の魅力に今更気づいた?」
「その言葉がなければなー」
「なにそれー」
いつものようにちゃかしあった。彼と話しているだけで楽しい。
彼が「はい」と手を差し出してくれたから、私はその手を握った。あまりにも自然だったからびっくりした。私たち今手を繋いで歩いてるよね。
原宿は、若い子がたくさんいた。道端で歌っている人や踊っている人がたくさんいるのはいつ見ても驚く。
私はまだ二十三歳だけど、十代はやはりかなり眩しい。服装からして違う。彼は私より五歳年上だからどんな風に思っているんだろと気になった。
気がつけば彼のことを考えている自分がいる。今までこんなことなかったのに。
あちこちにあるカラフルな店の看板が、この町全体をポップな感じにしている。
「クレープ屋さんあったー」
食べ歩きとショッピングをしようと、私達はまず有名なクレープ屋さんに来た。定番なデートというものがしてみたかった。そう諒に話すと「いいよ」と言ってくれた。諒は優しい。
クレープ屋さんはかなり昔からあるのに、今でもその店には人が並んでいる。
私はすぐに食べたいものを決めた。私は今まで悩んだりしたことがない。
待っている間にふと思った。今までも彼が隣にいて話していたけど、今は隣にいることがなんだか特別な意味をもった気がする。彼の腕に抱きついた。
「おいしー。やっぱり甘いものはいいね」
「確かに美味しい。今まで甘いものってあまり食べてこなかったなあ」
じゃあ私のためにわざわざクレープ屋さんに来てくれたのかと嬉しくなった。
「えぇー、それ人生の半分損してるよ」
「僕の人生は甘いものでできてないから」
「なにそれ、おかしい。あっ、諒のも少しちょうだい」
「笑う子にはあげない」
そう言って、彼が後ろを向いたから私も追っかけた。
彼の笑顔をもっと見たいと思った。
何をしても楽しかったし、彼となら楽しめると思った。
一緒に楽しめることは恋愛において大事なことだと思う。
私達は波長が合っているのだと思う。
そのあと、最近はやりの変わったアイスクリーム屋さんに行き、雑貨屋さんに行った。
夕焼けが空を赤く染めていた。もう夜になるのかと少し寂しくなる。もっと諒と一緒にいてたいと思う。
「今日は楽しかったね」
でも楽しいことばかりが頭の中で思い出せる。
「楽しかった」
「珍しく素直だね」
「僕はいつも素直だけど」
「かわいくないなあ」
「かわいいと思われたくないし」
そう言って、彼はいきなり私を抱きしめた。
「僕が萌のこと好きな男だってこと忘れてない?」
甘くささやかれて、動けなくなってしまった。不意打ちはずるい。
彼は少し笑ってからこう言って私の体から手を離した。
「今日はこれぐらいにしといてあげる」
私の胸の鼓動はずっと止まらなかった。
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