第3章 子どもの限界 5

トシさんを刑務所から助け出す。計画は、特になし。トシさんがいる場所を何とか探し出して、無理やり助ける。みんなの学校が休みになる、8月に。



ゆうとはバイト先の店長、優さんと奥さんの真琴さんに長期の休みが欲しいとお願いした。

「ちょっと施設のことで問題があって、大したことではないんですけど、とりあえず1ヶ月ほど休ませて欲しいんです。」

トシさんのことは言わず、そう告げた。もし2人がニュースを観ていたらバレてしまっているだろうが、今のところその気配はない。


「アルバイトは問題ないけど、大丈夫か?何か助けられることがあれば何でもするぞ?」

優さんはとても心配そうに話を聞いてくれた。でも、こんなに優しい2人を巻き込む訳にはいかない。

「本当に大丈夫です。他の子どもたちが難しい年頃になってきたので、この辺りでゆっくり接して話をしたいというのもあるんです。」


本当の目的ではないが、それは本心だった。チズはもちろん、ヨシコやシンとジンとの時間も最近は取れていない。トシさんのことがあって、この先どうするかしっかり話をするのも僕の役目ではないかと感じている。


「ゆうとがなんだか頼もしく見えるな。俺のおかげか?」

「そんな訳ないでしょ。あなたのことを反面教師にしているのよ。」

ふざけた優さんに真琴さんが反論する。なんだかんだ言って仲良しな2人だ。

「優さんと真琴さんのおかげですよ。いつも本当にありがとうございます。」

真琴さんはニッコリと笑って

「こちらこそ。ゆうとが来てくれて助かってるのよ。会えなくてちょっと寂しくなるけど、ゆっくりしておいで。」

そう言ってくれた。天使だ。


「何かあったら連絡は取れるようにしておきます。わがまま言ってごめんなさい。」

「おう、こっちは全然大丈夫だ。会いたくなったらいつでも遊びに来いよ。」

「はい。ありがとうございます。また連絡しますね。」

僕はそう言ってカフェを後にした。さあ、ここからが本番だ。絶対にトシさんを探し出して、助けてやる。トシさん、待っててね。心の中で強い決意を新たにした。



次回 第4章 トシさんとの再会

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る