第2章 新たな日常 10
話し合いでトシさんを救うことが決まってから1週間が経った。シンとジンは色々と作戦を考えているようだ。ここのところ部屋に2人で籠もって何やら話をしている。チズはあれやこれやと作戦を伝えてくれるが、どれも現実的でない。まぁ、最初から現実的な作戦をチズが考えられるとは思っていない。
「刑務所を爆発させて、その隙にトシさんだけ救い出すっていうのは?」
チズが目を輝かせてヨシコに相談している。
「それだとトシさんも死んじゃうよ。」
ヨシコが真顔で答える。
「でもトシさんが死なない程度に威力を弱めれば大丈夫でしょ?」
チズが自慢げにそれに応える。
「なんでそんな突拍子もない作戦に具体的な案まで考えているの。チズは賢いのかそうでないのか分かんないね!」
ヨシコはなぜか嬉しそうだ。確かに、チズはどこで覚えたのか分からないことをよく口にする。何処かにチズのゴーストライターがいるのではないかと疑ってしまうほどだ。
その日の夜、渡り鳥のリビングに5人は集まった。
「どうやって助けるか決まったの?」
チズがワクワクしながらみんなを見ている。ゆうととヨシコ、シンとジンは沈黙を貫いていた。子どもの考えた作戦で、逮捕された人を救えるのか?その思考が溢れれば溢れるほど、無謀なことではないかと思えて仕方がない。チズ以外の4人はそんなことを思い浮かべていた。
「みんな聞いてほしい。トシさんを助けることは決まっているけど、その方法がなかなか思いつかない。ヨシコ、シンとジンもそうだろ?」
僕は今の正直な思いをぶつけた。
「だから無理だって言ったのに。俺は最初から反対した。」
シンは表情を変えずに言った。確かにシンは最初から無理だと言っていた。僕は何も言い返せない。
「でも、みんなで助けるって決めたんだから大丈夫だよね?」
チズは難しいことなんて考えていないかのように明るく話している。僕も含めてみんながチズのような性格なら、、、
ん?みんながチズなら。僕は考えた。そうだ、みんなは、チズなんだ。
「、、、チズの言うとおりだね。みんなで助けるって決めたのなら、助ければいいんだ!」
「ちょっと待ってよ。その方法が思いつかないから困っているんでしょ?」
ヨシコは心配している。だが、そんなものは関係ない。
「そう。方法を考えずに助けるんだ。」
次回、第3章「子どもの限界」
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