第2章 新たな日常 7
牛乳とアンパンを持って走る日が本当に来るなんて。新人刑事の高橋は、学生の時に観た刑事ドラマを思い出す。こんな事現実には無いかも知れないけど、刑事になって人を助けたい、悪い人を捕まえたい。そんな夢のような動機でこの仕事に就いた。実際は雑務的な仕事が多く、どんな仕事にもこういう時期が必ずあるのだろうと思った。
高橋は今、先輩の立川に付いて仕事を一から叩き込まれている。目下張り込み中の、詐欺グループのアジトと思われるビルの近くに車を停めて監視している。
「お、意外と早かったな。ありがとよ。」
「立川さん、アンパンと牛乳好きだったんですか?」
「いや、特に。こういうの、刑事の憧れだろ?」
立川さんはなぜか誇らしげにしている。
「まぁ、イメージありますけど。」
「そんな事より、さっき本部から連絡が入ってな。緊急に頼みたいことがあるからすぐに戻って来いとさ。」
「見張りは誰か交代が来るんですか?」
「ああ、だが交代を待たずに帰って来いとさ。」
え。交代も待たずに帰還なんて、よほどの事件か?
「そんなに緊急事態なんですか?」
「、、、警視総監直々の頼みらしい。」
高橋は青ざめた。立川も、目の焦点が合っていない。かっこいい。
「え、嘘でしょ?警視総監なんて会った事ないですよ?」
末端の所轄刑事が警視総監と面識があるわけがない。
「俺もだ。だが、確かに俺たちを指名したらしい。」
「そんな。。。とにかく行きましょう。」
「ああ、駅に向かうぞ。」
立川は駅と反対方向に歩き出した。
「先輩、車は置いていくんですか?」
「ああ、そうか。原付で来てたのか。わかった。わかってる。」
立川は手と足を同時に動かして歩き去った。なんだかかっこいい。高橋は妙な高揚感を感じた。何が始まるのか分からないが、楽しみだ。
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