第2章 新たな日常 5

そんな無意味なことを考えている時間はない。

「とにかく、今ニュースになっていますよね?昨日からずっとニュースに出ていますよね?トシさんです!」

僕は必死に食い下がった。目の前の女性がまるで罪を犯した人かのように。

「すいません、分からないことには答えられません。」

「もういいよ、帰ろう?なんとなくだけど無駄な気がするよ、、」

見かねたヨシコが割って入る。

「…分かった、とりあえず帰ろう。」

僕は渋々諦めた。


僕とヨシコはそれ以外何もせず、黙って外に出た。外からちらっと中を覗くと、受付の女性と制服を来た警察官が何やら話していた。少し引っ掛かったが、これ以上何も出来る訳ない。諦めて再び歩き出した。


「何でもうちょっと粘らなかったんだ?」

僕は少しだけ不満げな顔でヨシコを見て言った。

「ヨシコが無駄だって言わなかったら、僕はもうちょっと粘るつもりだったのに。」

ヨシコはいつもの笑顔で僕の顔を見て

「ふふ、嘘でしょう?笑 身体震えてたよ笑」

ヨシコ、さすがだね。

「バレてた?なんでか分からないけど、怖かった。でも、とにかく早く助け出そう。トシさんは何も悪いことをしていない。それだけは分かる。」

僕は真っ直ぐ前を見て言った。ヨシコは僕の方を向き、

「そうね、私達のお父さんだもんね。」

「悪いことをしたとしたら、それは別の人間だ。突き止めるより早く、助けないと。」

「よし、みんなで作戦会議だね!」

ヨシコはいつもの調子が戻ったみたいだ。

「何楽しそうにしてんだよ。てか結局みんな巻き込むのかよ。」

「だって、家族でしょ?」

「…うん、そうだな。」


僕はヨシコの真っ直ぐな目を直視することが出来なかった。僕は知っている。捕まった人を助け出すことがどんなに難しいか。僕が学校でケイドロをしたとき、いつも警察が勝っていたから。でもトシさんと、ヨシコ達の為だ。必ず助け出す。そう決意して、少し歩くのを早めた。

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