第2章 新たな日常 4

僕とヨシコは動揺を隠しきれなかった。空はまだ暗い。

昨日、トシさんが逮捕されたというニュースを皆で観てから、ほとんど寝られずに朝を迎えた。同じ時間に起きてきたヨシコに話しかける。

「寝れた?」

ヨシコは身体に全く力が入っていない様子だった。

「1時間くらいかな。寝たというより記憶がない時間がそのくらいって感じ。ねぇ、これからどうする?」

不安なオーラをを全身から出している。

「とにかく警察に行ってみよう。施設の子だと言えば、何か聞けるかも。施設長が逮捕されたのに、施設に誰も来ないのが不思議だけど。」

「緊急逮捕だったのかも。もうすぐしたら警察の人が、間違いでしたとか言ってトシさんと一緒に来るかも。」

ヨシコは少しだけ希望を感じているのかも。

「限りなく低い事を願う時間があったら、早く警察に行こう。いや、ごめん。嫌味じゃない。」

「分かってる、言ってみただけ。シンとジン、チズには何か言う?」

「チズには何も言わない方がいいかもね。言っても理解出来ないだろうし、変に混乱させない方が良いだろ。」

「そうね、シンとジンはなんとなく察するけど、何も言わなそうだし。でもどうしよう?私たち、トシさんの本名も知らないのに、、、」

「テレビで放送されるレベルの逮捕だから、状況や施設のことを話せば分かるだろう。今行けば尚更だ。」

「うん、とにかく行ってみよう。」


交番なら歩いて5分ほどで行けるが、交番じゃ意味ないだろう。歩いて30分はかかる警察署まで足を運んだ。普段は歩くことのない道なので、変に疲れる。しんどそうに歩くヨシコのペースに合わせながら、ほとんど会話もなく来た。


受付の女性に話しかける。

「すいません、渡り鳥という児童養護施設の者です。あのー、昨日逮捕されたと、ニュースに出ていた方の事を聞きたいんですけど。トシさんという男の人です。僕達の施設の施設長なんです。」

途中で自分でも訳が分からなくなりながらなんとか言った。だが、女性は分かりやすく困惑した表情で答えた。

「ええと、、、どこの警察署で逮捕されたか分かるかな?昨日この警察署は誰も逮捕してないはずだけど、、」

僕は完全に言葉を失った。そうか、住んでいる所から1番近い警察署に逮捕されるとは限らない。僕もヨシコもそんなことさえ分からないなんて。

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