第2章 新たな日常 3

さて、今日は月初め。何より大事な仕事を済ます為、裏口から出てタクシーに乗り、100メートル程裏路地を進む。目的地より少し手前で降りて、更に細い路地を抜ける。


「よっ。」

いつものように軽く手を挙げて男に話しかける。

「ほい、今月の分。」

吉田は封筒を取り出し、男に渡す。男は軽く微笑みながらそれを受け取った。

「ご苦労さん、こんな事ももう終わりにしたいもんだ。」

呆れたような顔で男は言う。

「まぁ、生きていく為さ。」

「こんな事続けなくても生きてはいけると思うがな。」

「社会人の我々として生きていく、ということさ。」

「妙な話だ。」


ヨレヨレのスーツにボサボサの頭。社長と対等に話せるようには見えないこの男は某有名暴力団の幹部、鈴木。この界隈では組長より恐れられている男である。


「そういや、あいつの周りに妙な動きがあるらしい。」

鈴木が神妙な面持ちでそう切り出した。

「妙な動き?」

「もう手は引かせたが、探偵が調査に入ったみたいだ。」

吉田は不穏な焦りを感じた。

「待て、あいつにそんな手が及べば、俺たちだってただじゃ済まないぞ。」

「あぁ、もしかしたら、我々の中の一人が動き出したのかもな。」

吉田は空虚な思いにさらされる。

「勇気があるというか、革命的なやつだな」

「まぁ、上手くいけば何もかもスッキリするんだがな。」

「そんな簡単な話じゃないさ。」

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