第1章 僕たちの幸せ 9
ゆうとは目を覚ます。今日も1日が始まる。昨日見たのと同じようで違う景色を毎日見る。景色は一緒でも、それを見る人、気持ちは全然違う。だからこそ景色が変わっているように思う。
休日のお昼、渡り鳥のリビングに僕、ヨシコ、シンとジン、チズの5人が集まる。庭のプールを見つめながら、みんな不安になっていた。明日帰ると言っていたトシさんが、2日経っても帰ってこない。
「トシさん、どこに行ったか分かるか?」
僕はチズに聞いた。
「んーん、いつもみたいに行ってきますって言ってただけ。」
いつも見送るチズは答える。トシさんが外出する時は、必ずチズにひと言掛ける。
「こんなに帰ってこないって、ちょっと異常だね。」
普段から心配性なヨシコが、いつも以上に青ざめている。
「警察に言った方がいいかな?」
ヨシコは今にも泣き出しそうな顔をしている。
「え、トシさん悪いことしたの!?警察に行くときは助けてもらう時と悪いことした時だけだよね?」
「うん、だから助けを求めるんだ。」
僕は答える。
「でも警察は、1人すら満足に助けられないから、みんなで行っても無駄って、テレビで言ってた!」
「チズ、そんなことないよ。警察の人は、一生懸命助けようとしてくれるよ。」
チズの知識の幅には今言及する余裕がない。
「警察は、事件性が無いと動かないと存じている。」
チズ、どこで覚えたか知らないが、間違ってなくもない。
と、色々話しているうちにテレビのニュースをふと見ると、5人は言葉を失った。
——————————————————-。
“逮捕されたのは、元教師の60歳の男性。顔と元の職業しか分からない容疑者が、恐喝容疑で逮捕されました。容疑者は、
“わたしには守らなければならないものがある。”
そう繰り返しており、事件の概要は明らかになっていません。恐喝の現行犯の為、留置場にとりあえず入っているということです。“
というテレビの音と共に画面に映っているのは、僕たちが1番知っている大人、トシさんだった。
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