第1章 僕たちの幸せ 3


その日の夜、珍しくトシさんを含めた全員でご飯を食べることに。

「おい、それ俺の。」

「違う、それが俺の。」

「違ーよ、昨日決めただろ」

同じような柄の箸と皿を巡って闘いを繰り広げているのは、双子の兄弟、シンとジン。顔も背格好も話し方も、ほぼ同一人物。ことしで高校1年生になった、渡り鳥の仲間。僕は何年も暮らしているから違いが分かるが、チズなんかはよく間違えて怒られている。


「次間違えたらぶん殴る」

「うるせー」

見た目が同じなのだから、箸と皿くらい全然違うのにすればいいのに。なんだかんだで仲良しな2人だ。


「はーい、みんな食べるよー、頂きますするよー。チズ、席ついて!」

うろうろしているチズを注意しながら声を掛けたのは、ヨシコ。17歳、高校3年生の女の子。みんなのお姉さん、もはやお母さん役のような子だ。しっかりしていて気が利いて、テキパキしているヨシコに、みんなはまとめられている。僕より年下だけど、断然しっかりしている。


「ほら、今日はトシさんがチーズ作ってくれたから、早く食べるよ!」


「チーズハンバーグのことをチーズって略す人初めて見た」

「チーズハンバーグのことをチーズって略す人初めて見た」


「…細かいことは気にしない!」


シンとジンに同時にツッコミをくらったヨシコは恥ずかしそうに答える。

うん、たまにこういうアホな一面を見せるところも可愛いらしい。


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