第1章 僕たちの幸せ 2


僕と話しながら、チズは片手に牛乳、片手にヨーグルトを持って、器用に足で冷蔵庫の扉を閉めた。

乳製品2つ持って何するんだろう。

「どっちも食べる!」

チズは屈託のない笑顔を浮かべている。

「どっちかにしなさい、あと牛乳は食べないで飲みなさい。」

トシさんが冷静に言う。

「じゃあどっちも飲む!」

「・・・うん、まぁ、そうしなさい。」

トシさんとチズのやり取りはいつもこんな感じ。微笑ましいなぁ。


ご飯はトシさんが毎日作ってくれるし、冷蔵庫の中の食べ物は、適当にみんなで食べても良いことになっている。どこから出ているか分からないけど、トシさんはめちゃくちゃお金を持っている。不思議なオーラを醸し出している要因の一つだろう。僕は一度、トシさんに直接聞いたことがある。


「トシさんって、何でそんなにお金持ちなの?」

「んー、一生懸命生きているからかなぁ」

特に動揺することも、隠そうとすることもなく淡々と答える。


「じゃあ、僕も一生懸命に生きてればお金持ちになれるかな?」

「お前がお金持ちになりたいって思えば、なれると思うよ。」


嘘でも気休めでもない話し方。トシさんには不思議な魅力があり、その世界に引き込まれるような感覚になる。なぜお金持ちかなんて、正直どうでもいい。ただ、不思議だ。


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