7月第1週

 私の地道な努力により、彼女の好感度メーターは〈66〉まで上がっていた。

 みんな私を褒めてほしい。私が毎日どれだけ神経をすり減らしていたことか。


 しかし最近、可笑しな現象が起きていた。


好感度〈66〉

▲「おはよう、今日はいい天気だね」〈+3〉

◀「私と付き合ってください!」〈-30〉

▼ 何もしない


 お判り頂けただろうか。

 見ての通り、挨拶だけでは好感度が上がりづらくなっているのだ。先週は〈+4〉だったのに、今週はさらに落ち込んでいる。

 このままでは挨拶で好感度を上げることができなくなってしまう!

 だからといって、今日のこの挨拶をスキップできるわけではない。

 私は選択する。


「おはよう、今日はいい天気だね」

「おはよう。……確かに、今は天気がいいね。

 でも、午後からは雨の予報みたいだよ」


好感度〈69〉

▲「そうなの? こんなにいい天気なのに、もったいないなあ」

◀「寂しいこと言うなよ。お前には私という太陽が付いているだろ」

▼ 何もしない


「そうなの? こんなにいい天気なのに、もったいないなあ」

「勿体ない……。あなた、面白いこと言うのね」


好感度〈72↑〉+3


 夢の〈70〉台。

 しかしそう悠長なことは言ってられない。

 差し迫る危機が予感されるのだ。

 そろそろ次の行動に移らなければならない。




 そこで私は、無二の親友である夢浮橋ゆめのうきはしわたりに声を掛けた。


好感度〈120〉

▲「わたり、話があるんだ」

◀「実は好きな人がいて、話を聞いてくれないか」

▼「わたり、これは友達の話なんだけど」


 さて、どれで行こうか。

 一見、どれを選んでも大差なさそうだが、私と彼の間には大きな因縁がある。

 それをここで語るのは憚られるので、今は何とも言えないが、詰まる所……


「あ、久しぶり。……元気してた?」


 しまった! 悩み過ぎてしまった。


「お、おう。久しぶり、わたり」


「そんな釣れない顔するなよ。……誘ってんの?」

「そ、そんなわけないだろ!」


「ええー……でも、俺はいつでもOKなんだぜ」

「へー……、それはどういう意味かな」


「惚けんなよ。……あ、チャックが開いてるぜ」

「ひいい……」


 簡単に言えば、私たちの間には消しても消えない、深い関係があるのだ。

 ……言っておくが、私の処女は守っているからな!


「……それより、話があるんだけど」


 私は体裁を取り持つため、話を転換させる。


「いいよ、君のことだ。

 俺に出来ることなら、なんでも頼ってくれ」


 私は強い仲間を得た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る