恋のアルゴリズム

５月第４週

　今までの選択肢を思い浮かべて、私は一つの光明を得た。

　それは彼女が『強気な男性が苦手』であるということ。

　振り返ってみればわかりやすいこと。

『付き合ってくれたら通してあげる』

『私はお前に一途なだけさ』

　上記二つは、私が一発で撃沈した文言だ。これらに共通していることは先に述べた通り、強気な発言であること。

　女は強気な男に惚れるものではないのだろうか？

　例えば小学生時代、一番にモテる男子はかけっこで一番になる男子である。

　例えば中学生時代、一番にモテる男子は不良である男子である。

　彼ら二人に共通することは『強さ』だ。

『強さ』＝強気な姿勢は、彼女含める女子全般を篭絡することができる最も強い矛（ぶき）であると思うのだが……、どうも違うらしい。

　少なくとも、それは一般論だ。

　彼女には適用されないらしい。

　そこで私は、もう一つ分析を行ってみた。

　それは今まで、好感度が上がった選択肢の共通点を挙げることだ。下記はその好感度が上がった文言たちである。

『放課後、用事ある？』

『おはよう、今日はいい天気だね』

　……共通点なんてあるか？

　先の文言と対比的に考えるのであれば、すこし言葉使いが柔らかいところであろうか。

　あとは下手（したて）なところ。

　なるほど、彼女はお嬢様気質なのか。

　方針は決まった。

　私は今日の行動を開始する。

好感度〈42〉

▲「おはよう、今日はいい天気だね」〈＋5〉

◀「私と付き合ってください！」〈－40〉

▼　何もしない

「おはよう、今日はいい天気だね」

「おはよう」

　今日は質素だ。

　まあ、昨日あれだけの失態を犯したのだ。返答してくれるだけありがたいというもの。

好感度〈47〉

▲「そういえば、昨日の動画見た？」

◀「素っ気無いな。私の顔を見て挨拶しろよ」

▼　何もしない

　◀（ひだり）は論外だ。選択肢は二つ。

　私は迷った末に『何もしない』を選んだ。この中に妥当な選択肢はないと踏んだのだ。

　発展はないが、今日はこれで良しとしよう。

　時間はまだある。

　じっくりと好感度を上げて行けばいいさ。