5月第3週

 原点回帰を一念発起。

 詰まる所、私は初心からやり直してみようと決意した。


 私は選択肢を思い浮かべる。


好感度〈45〉

▲「おはよう、今日はいい天気だね」〈+5〉

▼「私と付き合ってください!」〈-40〉


 あら、今回は選択後の好感度変化を提示してくれている。一度行ったことがある選択肢だからだろうか。この恋愛ゲームは割と良心的なのかもしれない。もしくは修正パッチが入ったか。


「おはよう、今日はいい天気だね」

「おはよう。……あなたは、相変わらずみたいね」


 返答が帰ってきた。

 なんとびっくり仰天。まさか応えてくれるとは思いもよらなかった。

 ここで言う『相変わらず』とは、性懲りもなく明保野わたしに声を掛けてくるとは、飽きない人ね。そういう意味だろう。


 これは好感触だ。……いや、別にジョークを交えて貶されたことに興奮を覚えたわけではない。こうして、ジョークを交えて答えてくれるまでには、好感度が上がったということが好感触なのだ。


 次の選択肢が提示される。


好感度〈50〉

▲「そうか? 私はお前に一途なだけさ」

◀「そうでもないさ、気張ってるだけ……」

▼ 何もしない


 せ、選択肢が、増えているーっ!?!?

 これは困った。大いに困った。

 選択肢が多くて多いに困った。

 今まで二択だったものだ三択に増えている。くそう、この恋愛ゲーム舐めてたぜっ。こうやって難易度を上げてくるとは………。

 さぞかし神様もデバックプレイが大変だっただろうに。


 選択肢が増えていることはもちろん問題だ。しかしこの中に、奇妙な選択肢が増えていることに私は気が付いた。


『何もしない』


 そんな選択肢があっても良いのだろうか。何もせず、どうやって好感度を上げろというのだろうか。

 恋愛ゲームにおいて大事なことは二つ。

 どんな言葉を使って自分をアピールし、どんな行動を示して相手に自分を認めさせるか、だ。

 何もしなければ、何も生まれない。

 こんな選択肢は、この選択をスキップするようなものだ。


 私は選択する。ここは強気に行こう。


「そうか? 私はお前に一途なだけさ」

「あ、授業はじまるよ」


 ……無視された。


好感度〈42↓〉-8


 道のりはまだまだ険しそうだ。

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