5月第2週

 残りの1ヶ月の期間は、穏便に過ごした。

 そろそろ彼女の好感度メーターも復活しているだろう。

 私は行動に移る。彼女に声を掛けた。


明保野あけぼの!」


好感度〈50〉

▲「放課後、用事ある?」

▼「今から付き合ってくれない? 話があるんだ」


 難しい選択肢だ。正直、どちらを選んでも問題なさそうだ。

 そういった時、考えるべき要点は一つ。

 一体、彼女はどういった性格の人間であるか、それだけだ。

 私は彼女の思考パターンをトレースする。


 ……答えは決まった。


「放課後、用事ある?」

「ううん、特にないよ」


好感度〈52↑〉+2


 キターッ! 私は思わずガッツポーズを心の内でした。ようやく正解しました。朗報です。ようやく正解しました!


 ただ喜ぶことも束の間、すぐに次の行動を選択させられる。


好感度〈52〉

▲「実は、君に伝えたいことがあってさ」

▼「実は、明保野に伝えたいことがあってさ」


 ????????

 この選択肢はなんだ。何がどう違うんだ。……いや、この選択肢自体の違いは分かるが、こういう選択肢を設ける意味がわからない。理解できない。

 とりあえず私は選択する。迷ったらうえだ。


「実は、君に伝えたいことがあってさ」

「ごめんなさい、やっぱり今日は用事があった」

「じゃあ、明日でも……」

「その日も用事」

「じゃあ明後日……」

「その日も」

「明々後日……」

「それも」

「弥の明後日……」

「それはどういう意味?」


明後日あさって:明後日の次の次の日を指す言葉である。地域によって『明々々後日みょうみょうみょうごにち』、『五明後日ごあさって』とも言う。【出典:Wikipedia】


「その次の日は……?」

「その日は学校ないよ? ごめんなさい」


 そう言って彼女は立ち去った。


 なんだこのクソゲーは! 全く攻略の糸口が掴めない! いくら声を掛けようども、こうして初手で断られちゃあ、好感度だって上げようがない。


 もう嫌だ、と私は嫌気が差すも、今日の感触を確認しようと、彼女の好感度メーターを見た。


好感度〈45↓〉-7


 あれ、思ったより減ってない?


 私は思った。

 もしかしたら、彼女の中の私の評価が、ちょっとづつ変化してきているのではないだろうかと。

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