第2話 絶食
少し事故当日の話しになりますが仕事柄、朝起きるのは遅く夜寝るのも遅い訳です。
因みにこの日は午前10時頃に起床してオニギリ1ヶ食べてお風呂に入り、TVの情報番組を見ながら着替えや支度をして14時頃職場へ向かう為原動機付自転車に乗り出掛けました。
そして、事故を起こしてしまった訳です。
最初に運び込まれた病院ではとりあえず骨が大きく動かない様にギブスで固めてくれて痛み止めの飲み薬を処方してもらいました。
看護師さんにお腹が空くと思うから夕飯を用意しますねって言われましたが痛みが酷く食欲どころではなかったのでお断りしました。
結局夜が明けるまでに兄が差し入れしてくれた350mlのお茶2本これしか口にする事ができませんでした。
逆にこれで良かったのかもしれませんが、お小水は尿瓶を用意してくれてあったのでなんとかなりました。
しかしこの日は1月7日、私の住んでいる地区では春の七草を粥にして食べる風習がありなんと律儀に母親が作って差し入れてくれたのです。
それを有り難く一口だけ食べてそれから直ぐ再び救急車にて転院する事となるのです。
多分ですが朝9時頃に市立の病院に到着したと思います。
そこから事細かに検査していただいて終了したのが午後2時くらいだったでしょうか。
入院部屋に移され (初日は一人部屋でしたが直ぐに四人の大部屋に移されました) 食事は午後6時頃ですからと言われたのですが…
大きな病院に転院できて検査も一段落して少し落ち着いたのか現在の身の回りの環境や状況が把握できたせいもあり、ここである疑問が浮かびあがりました。
排泄は …(勿論大きい方です) …今の私に自力でトイレへ行く術は無いですし動かされても激痛が走るんです。
実はCTやらレントゲンやら心電図その他にも沢山の検査をしていただいたのですが勿論一ヶ所で済む訳がないから検査毎に部屋を移されベッドに載せ換えられ (終始横たわったまま) その都度その振動でさえ走る激痛に苦しみ耐えてきた訳で。
それがもし、トイレへ行こうものなら車椅子に乗るという行為が必須になることは間違えありません。
体を起こして車椅子に乗るということだけの作業がこの時の私にとっては拷問に等しいくらいの行為なのです。
立ち上がると重力に引っ張られて折れた骨が筋肉に覆われた中心部でグラグラ、ごりごり、と擦れるのです。
それは想像するだけで気絶しそうなくらいの拷問なのです。
ですからこの時まだ何か他の手立てがあるんじゃないかと思い、食事の時間を告げてくれた看護師さんに大きい方のトイレはどうすれば良いですか?と、問うと…
今、丁度患者さんあなたの履いている下着が大人用の紙おむつなのでそこにするしかありませんですかねぇ…
そんなぁ…
考えてみれば既に前日の起床から今の今までオニギリ1個とお粥一口しか食べてない。
自力でトイレへ行く事を前提にして考えると…
明日、丸一日手術前後は飲み食いなしの絶対安静…
手術の翌日でさえ自力でトイレへ行っても良いと言われなきゃ行けない…
思えば、事故当日入院、翌日転院及び精密検査、翌々日手術、またその翌日術後検査(午前中)この検査次第ではまだこの日も食事は摂れないかもしれません。
この4日間で口にしたものオニギリ1個とお粥一口。
いくら痛くてもさすがにお腹はペコペコです。
しかし、大人用オムツに漏らして用を足さなきゃなんない。
匂いは出るし、自分ではお尻拭けないし公開処刑ではないですか。
オムツに大便を出して看護師さんを呼んで拭いてもらうんですよ。
耐えられませんよ。
私にはできません。
そんな事なら餓死した方が余程ましだと心の底から思いました。
人としての尊厳、自尊心、羞恥心を全て無くしてしまうような気がしたんです。
あなたならどちらを選びますか?
若しくは他の解決方法でもあったのでしょうか?
そこで私は覚悟を決めました。
勿論、空腹に耐えることを。
絶食です。
そして自尊心や人としての尊厳を守り、屈辱からの回避を選んだのです。
大袈裟でしょうかね。
今日は1月12日なので事故からほぼ一週間が経ちました。
次回は術後の生活を書きたいと思います。
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