第22話 北極決戦
北極では 壮絶な戦いの末に、北極沿岸部のネーロ軍のミサイル基地は陥落していた。
「医療班は怪我人を掌握して、北部基地へ移送しなさい! あとの者は中央基地へ向かうわよ!」
次々と指示を出し、先頭切って進むステラに、兵士達の雄叫びが北極の大地を震わし、戦闘隊形ドラゴンとなってステラを追った。
戦闘隊形ドラゴンは、戦闘服部隊が合体し大きな竜となって戦う、最強の戦闘隊形である。合体する事で、途轍もないパワーを発揮する事ができるのだ。
もはや、彼らの進撃を止める者は誰もいなかった。そして、そのドラゴンが、ネーロ軍の中央基地へと攻め入ると、既に、先遣隊とネーロ軍の戦いは始まっていた。
ステラ達のドラゴンに先遣隊が合体して、更に巨大化したドラゴンは、その凄まじいパワーで暴れまくり、ネーロ軍の基地を、戦闘部隊を、ロボット軍を、悉く撃破し壊滅させた。
ステラ達が、戦いは終わったと戦闘隊形を解いた時、地中から凄まじい赤い光が噴出して来たかと思うと、
「ズゴゴゴゴゴゴーー!!!」
ネーロ軍の司令官ヤミが大地を割り、高さ五十メートルはあろうかという巨人となって姿を現した。怒りの赤い目は切れ上がり、裂けた口には牙が光っていて、その体形は悪魔の様なおぞましいものだった。
「何だあれは!?」
サファイヤ軍の兵士達は、口々に叫んでヤミを見上げた。
「恐らく、あれは特異なアンドロイドだと思います。人工細胞を増幅させて巨大化しているのです」
レグルスが分析している間にも、ヤミは、大地を揺らしてサファイヤ軍に襲い掛かって来た。
「貴様ら、よくも基地を破壊してくれたな。許さん!!」
ヤミは、青い稲妻の様な光線を口から吐きながら、狂ったように、サファイヤ軍を蹴散らしていった。
「逃げて! 後ろに下がりなさい!」
ステラが、あまりのヤミの力に恐怖を覚え、兵を後退させた。
「ステラ様、パワーが違いすぎます。あれに対抗できるのはドラゴン隊形しかありません!」
レグルスが必死の形相で叫んだ。
「待って! 皆、ドラゴン隊形の使いすぎで、パワーと体力を消耗しているわ。ここは、私に任せて!」
ステラは、空中に浮かび上がり“羽衣”を起動した。ピンク色の帯が現れ、ステラを護るように纏わり回り始めた。
サファイヤ軍の兵士達には、プラチナの白のスーツとピンクの羽衣を纏ったステラの姿が、舞い降りた天女のように見えた。
「食らえ!」
ヤミの口から吐かれたサンダービームが、ステラを直撃した。だが、羽衣で護られたステラにダメージは無かった。スペースを纏ったステラのパワーは、限りなく上がっていたのだ。
ステラが、右手に添わせた羽衣をシュルシュルと伸ばして、ヤミの太い腕に巻き付けると、エネルギーの塊である羽衣に触れたヤミの腕は、瞬時に溶けて斬り落とされた。
「おおっ!」
遠巻きに見守るサファイヤ軍から、歓声が上がった。だが、次の瞬間、ヤミが力を込めると、斬られたところから、新たな腕がググっと生えて来たではないか。
「なんという再生能力なの!」
ステラは、唖然としながらも、今度は、羽衣を刀に変化させてヤミの腕を切断したが、斬った尻から腕は生えて来た。
「それで終わりか? 今度はこちらから行くぞ!」
直径数メートルはあろうかというヤミの太い腕が、ステラの身体を捕まえに来る。それを羽衣で斬り続けるのだが、瞬時に再生するヤミの腕が徐々に迫って来て、終にステラは、ヤミの大きな手に捕らえられてしまった。その刹那、ヤミの口からサンダービームが「カーーーッ!!」と吐き出され、自分の腕もろとも吹き飛ばした。
至近距離からの攻撃に耐えきれず、ステラは落下し地面に叩きつけられた。
「ステラ様!!」
固唾をのんで見守っていたサファイヤ軍から、悲鳴のような声が上がった。レグルス達十拳士が駆け寄ろうとすると、ムクッと起き上がったステラが手を翳して制した。
ステラ自身も、昨日からの戦いの連続で疲れがピークに達していて、全身から吹き出す異常な汗と、気だるさを感じていた。スペースは最強のスーツだが、ユウキとコスモのように完全に一体化していない為、普通に疲れてくるのは仕方が無かった。
「早く決着を着けないと身体が持たない……」
彼女は、焦りを感じながら呟いた。
ステラは、ヤミの手の届かない所まで飛び上がり、再び羽衣を起動した。そして、羽衣を直径五メートルはある巨大な手裏剣に変化させると、その手裏剣を高速回転させてヤミに投げつけた。
「行けーッ!!」
ヤミは、その身体に似合わない素早い動きで、ピンクの円盤状になった手裏剣を素手で弾き飛ばすと、手裏剣は、何する事も無く消えてしまった。
「今のは子供だましか!? ええーい! お前と遊んでいる暇はない。これで終わりにしてやる!!」
ヤミは、両の足をズンと踏ん張り、裂けた口を開け、前かがみになると、スーパーサンダービームの発射体制に入った。このビームは今までの十倍の威力がある、ヤミの最強兵器なのだ。
身体の中で稲妻が走り、途轍もないエネルギーが蓄積されて、その口から青い光が溢れだした。
そして、一気にエネルギーを放出しようと、ヤミの口がクワッと更に裂けた、その瞬間。
「ウ、ウガーッ!!」
悲鳴と共に、ヤミの首が転がり落ち、その首の付け根から、凄まじいサンダービームが天空に吹き上がって、彼の巨体は「ズズーン!」と崩れ落ちた。
ヤミの首を斬ったのは、先ほどの巨大な手裏剣だった。消えたと思われた手裏剣は、更に高速回転して見えなくなっていただけで、ヤミの隙を伺っていたのだ。
ステラは、羽衣を巨大な槍に変化させて、一気に、ヤミの脳天を貫き、中枢回路を破壊した。更に、特大のエネルギー弾を浴びせると、ヤミの頭は跡形もなく吹き飛んだ。
「ステラ様、大丈夫ですか?」
地上に下り立ったステラに、レグルスとサルガスが駆け寄った。
「大丈夫、でも疲れたわ」
三人が、倒れたヤミの巨大な身体を眺めていると、突然、その身体が赤く光り始めた。ステラ達が後方へと退避し見守る中、ヤミの身体は更に輝きを増し、周りは数千度の高温となって、雪や氷をシューシューと溶かし始めた。
「自爆よ! みんな、逃げて!!」
ステラの叫びに、サファイヤ軍は北部基地方面へと一斉に飛び立ち、ステラだけが、ヤミの骸の上空に止まった。
「スペース。避難は終わったから、凍らせて!」
『ラジャー!』
スペースが、両手から放つ巨大な冷凍光線をヤミに浴びせ続けると、濁流となって逆巻いていた洪水や海は瞬時に固まり、溶鉱炉となっていたヤミの身体は冷却されて、赤い光は終に消えた。
そして、ステラがヤミに向かって最大級の振動波を浴びせると、ヤミの身体は木っ端微塵と砕け散った。
戦いが終わった直後、スペースが、ユウキの異変をステラに伝えた。
「ユウキに何かあったようだわ。すぐに帰りましょう」
ステラ達は、退避していた兵士達と共に、一路、ライト王国への帰路についた。
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