ドライアース — 瞼の向こうの太陽 ―

5話 スフィア編ー シトリーの服屋

　周りには、アナ帝国の敵将サラマンドと、レナ国の精鋭兵９人の骸。

　タヌキ兜をつけた１０代半ばの女（ミスティ）は立ち上がり、震えながら、

「コレが戦争…　原始人ありがとう」

　自信を無くしたタヌキ兜女に、スフィアは笑みを見せ、

「絶対に勝てないのに、よくサラマンドに切りかかったな？」

　タヌキ兜の女は、血だらけ＋汚いスフィアを見つめながら、

「維持よ…　死ぬ前の最後の意地よ…」

　それを聞いたスフィアは…　

　腕を組みながら、目をつむり、鼻で「フッ」と嬉しそうに笑った…

　タヌキ兜の女はフラフラと立ち上がり…　弾き飛ばされた自分の剣を取りに行き、剣を取ると…

「さようなら＝！」

　スフィアから逃げ去った！

　一人ぼっちのスフィアは、聖剣『ステラジアン』を拾って腰にかけ、死んだ兵のマントを拾い、それで顏の血を拭きながら、

「なんで逃げるんだよ？　お腹空いたな…木の実でも食べるか」

　パクパクと食べて、

「やっぱり生じゃ美味しくないな…」

　己の薄汚い毛皮服を見て、

「さっきのタヌキ兜女もワタシを原始人と言ってた…やっぱり服を買わないと行けないか…」

　女が走り去った方角を向き、

「多分、アッチに村とか町がある気がする」

　空飛ぶカラスに大声で、

「ワタシは町に行くから！家族の元に帰っていいぞー！　ありがとう！」

「アホ―！」

　カラスは動物の村へ飛んで行った。

　スフィアはパクパクと木の実を食べながら、西へ歩いた。

　スフィアの予想通り、しばらく歩くと、そこそこ大きい町があった。

　町に入ると…

「なにあの子？　どう見てもよそ者でしょ？」

「原始人？」

「汚いわね…臭い？」

「ははは、なにあれ？　汚えな」

　人間の声を、全く気にする素振りを見せずスフィアは、服屋と書かれた店の前で足を止めた。

「あった」

　スフィアは服屋の戸をス――と開け中に入ると、

　同い年くらいの少年が立っている。　少年はスフィアを見て、

「うわ！　なんだ！　お前！？」

　スフィアは少年の目をジッと見返し、

「客だよ」

　少年はスフィアの全貌を見て、

「汚なすぎるだろ？」

　スフィアは来ている毛皮を見て、

「だってコレしかないんだもん…」

　その後に、少年を見ながら、癖の『ヘ』の字口になった。

「どこから来た？　この町の人間じゃないだろ？」

「森だよ、雷がよく落ちる森、知らない？」

「知るか。　金（きん）はあるのか？」

「うっ、うん…」

　不安顔のスフィアはアモンから渡された、汚い布袋を少年に出した、

「布袋まで汚いな～…中身を確認するな」

　少年が布袋を逆さまにすると、チリンっとテーブルの上に小銭が落ちた。

　少年は一瞬で数え終え、

「０．０５金か…」

　スフィアは凄く不安そうに、

「足りるか？」

「まあいいか、なんか可哀そうだし、ちょっと待てよ、安い服を用意する」

　少年は奥に消える。スフィアは並んでる多種な服を眺め、

「ほえ～っ、服って色々あるんだな～、キャミソール～？　ワンピース？　なんじゃそりゃ？」

　すぐに少年が出てきて、

「これくらいだぞ、０．０５金で売れるのは」

　フードの付いた白い服を出した、スフィアは服を両手で取り、ニコニコと眺めて、

「いいなこれ」

「すこしサイズがデカいけどな、まあ膝くらいまであるけど今よりはマシだろ？」

　スフィアはニコニコと、

「うん、着ていいかな？」

「ああ、しちゃくしっ、おいおい！　ココで脱ぐな！　というかお前は下着は？」

　スフィアは不思議な目で少年を見つめ、

「シタギ？　なんじゃそりゃ？」

「お前…まじか？」

　スフィアは何度も頷きながら、

「シタギ？　うむ…シタギ？」

「もういいよ」

「なんか悪いことした？」

「いや名前は？」

「スフィア」

「スフィアか？　いい名前だな？　俺はシトリー」

「シトリー？　へんな名前」

「まあ、とにかく着替えてこいよ…アッチが試着室だ」

　と、試着室を指さした。

「あそこで着替えるんだな？」

　シトリーはスフィアを見つめ、

「そうだ」

　スフィアは試着室に入り、着替えて出て来た、そして、気持ちよさそうに、

「着心地いい、ゴワゴワも無いし、ネトネトも無い」

「良かったな？　ところで、スフィアは森に帰るのか？」

「帰らない」

「ふ～ん、どこで泊まるんだ？」

「この家で泊まる」

　シトリーは、

「え？」

　っと驚いた。

　他に誰も居ない店をみたスフィアは、

「シトリーは１人で住んでるの？」

「そうだよ、母は昔、病気で死んで、父も先月、アナ帝国との戦争で死んだから…今は俺一人だ」

「それなら部屋ってのが空いているだろ？　貸して欲しい」

「スフィア？　すこし同情とか無いのか？　まあ、いらないけど」

「シトリーも１人じゃ寂しいだろ？」

　シトリーはスフィアに背を向けて、腕を組み、

「そんなわけない」

「ワタシは寂しいよ、昨夜は動物と寝たけど、一人ぼっちになった事ないから」

　シトリーはスフィアに背を向けたまま、

「わかったよ、一番、奥の部屋を使え、空いてるから」

　スフィアはニコっと、

「よかった」

　サッと部屋に行こうとした、その時、シトリーが、

「スフィア待て！」

「なに？」

スフィアを睨みつけたシトリーは、

「その前に体を洗え、絶対だ」

「わっ、分かったよ…」