第3話 やべえどうしよう

放課後、誰もいない教室に1人立っていた。

教室の外から足音が聞こえて来る。

始めは小さかった足音もだんだん大きくなり、そして、


     ガラガラッ


と扉が開かれる。

開けたのは絶世の美女だった。

僕より少しだけ背が高く、黒に少し茶色が混じっている髪を二の腕辺りまで伸ばしている。端正な顔には髪と同じ色の綺麗な瞳を持つ目があった。

東洋美人と表現するのが一番しっくり来る彼女、篠原かえでは僕を見ると、


    「久しぶりだね!悟君!」


そう言った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


話は今朝まで遡る。

高橋は僕にあるアプリを教えてくれた。

「催眠、アプリ?」「そうだ」


「催眠アプリ」…アプリ内の画面を見せたものを催眠状態にし、好きなように操ることができる。

同人誌でしょっちゅう出てくるがまさか本当に存在するとは思わなかった。


彼曰く、篠原と柳沢が付き合うのがどうしても許せないなら、彼女を催眠状態にしてでも自分の物にしてしまえ、ということらしい。

なんともゲスな発想だが、僕はそれに乗った

花沢さんも協力してくれた。高橋が彼女に頼んだらしい。

なんて頼んだんだろう?普通彼氏がそんな事しようとしたら止めないか?

でも彼女もノリノリだったし……高橋が催眠を彼女にかけたとか?

とにかく花沢さんが篠原を教室に呼んでくれた。


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「元気だった?」「うん、まあ」


久しぶりの、2人での会話。なかなか弾まない。

「今日は、どうしたの?呼び出したりして」

その言葉に僕は苛つきを覚える。

「呼び出しちゃ悪かったか?」

「え?いやそういうことじゃ」

「ごめんな、彼氏との時間を邪魔して」

「じゃ、邪魔だなんて、そんなこと…彼氏?」

彼女が困惑したような顔をする。

おちょくってんのか?

「か、彼氏ってどういうこt」

「どうして…柳沢なんだ?」

「え?」

眉を潜めて困惑したふりをする。

隠す気だろうか、彼との関係を部外者に知られたくないのだろうか?

「なんでだよ…俺じゃダメかよ…」

「ちょっと待って!一旦おちつ」

「うるさい!!」

体が動く。僕は彼女を押し倒していた。

「キャッ」

「あんなに仲良かったじゃないか!!なのになんで…」

「ままま待って!こういうことは身体洗ってからじゃなきゃ…でも悟君がこういうのがいいなら……!!」

目をグルグルさせながら、訳の分からないことを言う篠原。相当動揺している。

「篠原ァ!!」「ひゃっい?!!」

「これを見ろ!!」

彼女の目の前にスマホの画面を押し付ける。

画面からはピンクの光が漏れ、ミョンミョンという音がもれている。


「洗、脳?……あっ………………………」


画面を見た彼女は変な声を上げてから動かなくなった。


終わったのか?

スマホの画面を見る。

「洗脳完了」と書いてあった。

彼女は、虚空を見つめたまま動かない。

「上手く…いったのか?」

彼女のこの状態は催眠状態のそれだ。

ということは…

「おい」「はい」「立ち上がれ」「はい」

言われた通り、篠原が立ち上がる。

言うとおりにした。反抗の意思は見られない。本当に催眠状態に陥ったようだ。

それなら、命令してみよう。

僕は9年間の願望を口にした。


「俺の、彼女になってくれ!」


俺の命令を聞いた篠原かえでは、


「はいっ!あなたのお嫁さんになります❤️」


そう言ったーーーーー!





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