第3話 選択

 俺の言葉を聞いた神様は呆れたような顔をした。


 「わしが言うのもなんじゃが、おぬしは今回の事件の被害者じゃ。文句の1つや2つ甘んじて受け入れるつもりじゃったのに」


 別に文句を言ってもいいが殺したのはこの人じゃない。それに、この場で文句を言ってはいそうですかで、うやむやにされたらそれこそ問題だ。やるなら自分の報復は自分でしたい。まあ、仮にも天使だし無理だろうが。


 「まあいい、気にしてないのならそれでいい。わしもいつまでも気にしてられんからな。それよりも今後どうなるかじゃったかな」


 「おぬしには、二つの選択肢がある」


 「一つは、すべてを忘れて殺される日の朝に戻ること」


 「もう一つは、わしの管理している世界に転生すること。この選択肢を選んだ場合生き抜くためにわしの力を少し分けてやろう。ちなみに天国なんてものはない、人間の妄想じゃ」


 へぇ・・・天国ってないんだ、神様がいるからてっきりあるとばっかり。って、そんなことはどうでもいい2択について考えよう。


 1つ目は何もなかったことになる。駄菓子屋裏の道を見つけることなく、そのまま学校に行って元の退屈な日常に戻るということだ。別に悪くはないが、こんなことに巻き込まれておいて何もなしじゃ面白みがない。それに力を分けてくれるって言ってるし、もしかしたら仕返しができるかもしれない。そういえば大事なことを聞いてなかった。


 「そのエリアス?って世界はどんな世界なんですか」


 もし俺の予想通りなら・・・


 「あぁ、説明してなかったのう、わしの世界は魔力や霊力といったもので世界が成立している。ステータスなんてのも見ることができるぞ。まあ、身も蓋もなく言えばファンタジーでRPGのような世界じゃよ」


 「エリアスに転生します」


 「えっ、管理しているわしが言うのもどうかと思うが危険じゃよ?死亡率ほかの世界と比べてダンチじゃし」


 俺もあなたがそれを言うのはどうかと思うが、そんなことよりも優先させなければいけないことがある。


 「転生します」


 「そんなに言うなら、止めることもあるまい。よし、そうと決まれば条件を決めるとするかの」


 当然と言えるかもしれないが俺だって青春真っ盛りな男子、やはりファンタジーに憧れている。すましたような顔をしていたが心の中では踊り狂っていた。それでも神様が質問をし始めると答えることに集中した。いい条件でいかなくては。


 「まず年齢じゃ、0から18歳つまり前世での年齢までだったらどれでも選べるがエリアスでの成人である15歳未満の場合、肉体の再構成を行い保護者がいるところに転生させる。それ以外は普通に町の近くまで送るから実質転移じゃ、ちなみにわしは14歳をお勧めするぞ。保護者がいたほうが生存率が高くなるからのう」


 別に神様の言うとおりにして14歳を選んでもいいが、せっかく異世界に行くなら家族のような無駄なしがらみはない方がいいし、どうせなら今の容姿でいたい。自分で言うのもなんだが結構なイケメンだと思う、俺。


 「そのままの18歳でお願いします」


 「ふむ、分かった」


 神様は自分のアドバイスが全く考慮されることなく決められたことに、少し不満そうな顔をしながらも質問を続けた。


 「次に場所じゃ、エリアスには4つの大陸がありそれぞれに特徴がある」


 「一つ目は陸地面積が一番大きく、住んでいる人間の約七割が人族の大陸」

 「二つ目は、陸地の殆どが森に覆われていて、主に森人族エルフが住んでいる大陸」 

 「三つ目は様々な種族の人間が共生し暮らしている大陸」

 「四つ目が人間が住んでおらず、魔物しか存在しない大陸。ほかにも様々な島があるが今回はここから選んでもらうぞ」


 「わし的には、一つ目の大陸がおすすめじゃ。おぬしも人族に転生させる予定なので、同族が一番いる方が安心できるじゃろう。それと流石に人もいなければ、ろくな食料もない四つ目の大陸から始めるのは、無謀もいいとこじゃと思うぞ。実質三択じゃな。」


 これには俺も同感なので無難にいこう。強くなってからほかの大陸に行くのはいいかもしれないが今はやめておこう。転生した瞬間に死にそうだ。


 「一つ目の大陸でお願いします」


 この回答には満足したのか、にっこりと笑う。


 「これで質問は終了じゃ」


 決める事はもうないようだ。てっきりもっと細かい事まで聞かれると身構えていたので、正直拍子抜けだ。


 目をつぶり何かを考えているような格好の神様を見ながら、次は何をするのかと見ていたら。唐突に両目をカッと見開き大きく両手を振り上げ、得意げな顔をしながら大声で言った。


 「次はお楽しみのガシャタイムじゃあ!!!」


 俺は、頭のおかしくなってしまった神様に白い目を向けながら、その場から少し離れた。




(2021.1.23 改稿)

ルビの使い方を発見、早速試してみました。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る