第十一回 真面目っ子が弾ける時、それが本質と告げるの。
――弾ける、弾むその姿。今のせっちゃんがまさにそうだ。スキップ交じりの足取り。
今はまだ白昼の手前、午前の青いカラーリングのイメージ漂う風。
靡く髪。……軽快なるテンポで次なる店舗を目指す。ただ、ここからは少しばかり距離があるの。走るバス、僕らを乗せる。腹ごしらえの時迫る合図を奏でてしまって……
「腹が減っては戦ができぬだね。大丈夫、可愛い音だったから」
と、さりげないフォロー。
せっちゃんは、あの頃と同じ。……声を掛けてくれた。僕はあまり自分から、声を掛けたことがなかったから。そう。僕にないものを持ち合わしているから……
もういい加減、慣れっ子のはずなのに、また泣いちゃって……
そんな時なの。「どうしたの?」って、声をかけてくれた子が、せっちゃんなの。
東の都の学校へ転校してから、
初めて僕に声を掛けてくれた子だった。その頃のせっちゃんは、まあ……今とはちょっとばかり違っていて、清楚あるお嬢様って感じの子だったの。……あっ、もしかしてだいぶ違うのかな? 今とは。でもそれが、初めて会った頃の
学級委員長。超真面目な女の子。
それが変貌を遂げたの。……夏のことだ。彼女は家出をして僕を訪ねた。お母さんと喧嘩をしたらしく、ボロボロ大泣きしていた。彼女の涙を見たのは、この時が初めて……
バズに乗った。今のシーンと被るほどの。
それがきっかけで彼女は弾ける。――涙の先にあるヴェールを脱いだ裸の自分と。
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