第十一回 真面目っ子が弾ける時、それが本質と告げるの。


 ――弾ける、弾むその姿。今のせっちゃんがまさにそうだ。スキップ交じりの足取り。



 今はまだ白昼の手前、午前の青いカラーリングのイメージ漂う風。


 靡く髪。……軽快なるテンポで次なる店舗を目指す。ただ、ここからは少しばかり距離があるの。走るバス、僕らを乗せる。腹ごしらえの時迫る合図を奏でてしまって……


「腹が減っては戦ができぬだね。大丈夫、可愛い音だったから」

 と、さりげないフォロー。


 せっちゃんは、あの頃と同じ。……声を掛けてくれた。僕はあまり自分から、声を掛けたことがなかったから。そう。僕にないものを持ち合わしているから……



 所謂いわゆるMAXマックス一年半の転勤族。それが僕のパパで、つまりは最大で一年半しか同じ学校にいなかった小学生時代。お友達ができても、すぐ転校になってサヨナラなの。……このことも例外ではなかった。小学六年生になる前の、東の都に越す前のね……太郎たろう君とバンプラ一緒に作った思い出あふれるシーンの数々に、あふれる涙……


 もういい加減、慣れっ子のはずなのに、また泣いちゃって……


 そんな時なの。「どうしたの?」って、声をかけてくれた子が、せっちゃんなの。


 東の都の学校へ転校してから、

 初めて僕に声を掛けてくれた子だった。その頃のせっちゃんは、まあ……今とはちょっとばかり違っていて、清楚あるお嬢様って感じの子だったの。……あっ、もしかしてだいぶ違うのかな? 今とは。でもそれが、初めて会った頃の日々野ひびのせつという女の子だった。


 学級委員長。超真面目な女の子。


 それが変貌を遂げたの。……夏のことだ。彼女は家出をして僕を訪ねた。お母さんと喧嘩をしたらしく、ボロボロ大泣きしていた。彼女の涙を見たのは、この時が初めて……


 バズに乗った。今のシーンと被るほどの。


 それがきっかけで彼女は弾ける。――涙の先にあるヴェールを脱いだ裸の自分と。



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