760・×××






「……あら?」


 りょういきが、ぶんだんされていく。

 けーきのように、きりわけられていく。


「ああ……さかきばら、りぜ、ですか」


 ちを、あたえるか、まよって、けっきょく、あたえなかった、ひとり。

 ぽてんしゃるこそ、ずいいちでも、そのせいかくが、わざわいすると、おもったから。


「おしいことを、しました。りぜも、ひるでがるども」


 せいご、なのかいないの、あかごに、わたしのちを、いってき、のませる。

 そうすることで、このせかいの、にんげんが、たいぷ・ぶるーとよぶ、あおいちと、なる。


 せけんでは、たいぷ・ぶるーは、さいのうにめぐまれたものが、おおいと、されてる。

 あたりまえだ。そもそも、ぜんていが、ぎゃく。

 てんぴんの、もちぬしを、つぶさに、みきわめ、そめあげたのだ。


 ごうけい、ななじゅうななにん。

 わたしの、いんしを、うえつけた、いとしごたち。


 こどもたちが、しんだとき。こどもたちのもっていた、すべてのちからが、あおいちとともに、わたしへと、もどってくる。


「あ」


 ちょうど、いま、またひとり。せかいの、どこかで、あおい、ちが、しんだ。


 ああ。ああ。

 かなしいこと。

 とても、とても。


 ああ。ああ。

 よろこばしいこと。

 とても、とても。


 わたしの、ちが、またひとつ、へってしまった。

 わたしの、ちからが、またひとつ、みたされた。


 にんげんという、ぜいじゃくなうつわが。

 いきをするだけで、きしむからだが、ほきょうされる。


「でも。やはり、だめ」


 まえの、うつわと、くらべて。あまりに、もろすぎる。

 これでは、かじつを、かじれない。ほんたいを、よびよせられない。


 せかいりんごを、たべられない。


「ふふふ」


 だけど。だいじょうぶ。

 このうつわは、あのこと、もじどおり、いとで、つながっている。


「あと、すこし。あと、すこしで、ぜんぶ、たぐりよせられる」


 そらに、てを、かざす。

 ほそくて、まっしろな、たたかいとは、むえんの、て。


「──ごうけつ」


 あかい、ひかりが。どうみゃくの、うちがわで、またたいた。






「さて」


 どうせ、しばらく、たいくつだから。


「いちおう、いいわけの、ちゃんす、くらいは、あげましょう」


 このせかいで、もっともすぐれた、けんこうに、つくらせた、けんを、ぬきはなつ。


「ほんき、ですか?」


 きれあじの、おとろえない、おれても、すぐに、はえかわる、くろい、やいば。


「ほんきで、みこの、やくめを、ほうきし、わたしを、うらぎる、つもり、ですか?」


 めのまえに、おりたった、ふぉーまるはうとは。うすく、わらって、うなずいた。


〈然リ。妾ハ既ニ王ヲ見初メ、見出シタ。最早、惰性デ貴様ヲ主上ト仰ギ、半バ不貞腐レナガラ従イ続ケル理由ナド無イ〉

「……かなしい、ですね」


 りかい、しかねる。

 ほんとうに、りかい、しかねる。


「ながくとも、すうひゃくねん。みじかけば、すうじゅうねん」


 きょうえんを、ひらくに、さいし、しょくたくを、よういするのが、みこの、やくめ。

 ゆえにこそ、きおくの、けいしょうを、ゆるしている、とくべつな、こまづかい。


 なのに。


「そろいも、そろって、さいしょこそ、したがう、くせに」


 まえも。そのまえも。さらにまえも。

 はるかはるか、はじまりにまで、さかのぼっても。


「どうして。みこは、すぐに、そむくの、でしょう、ね」

〈──知レタコト〉


 ろくまんななせんにひゃくろくじゅうごほんの、つららが、わたしに、せまる。


「貴様ニ喰ワレタ日ノ絶望ト恐怖ヲ、憤怒ト屈辱ヲ──決シテ忘レラレヌカラダ!!」


 はあ。ああ。そう。そうだったの。


 すごく、どうでもいい。





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