754・×××






 ああ。たべられる。

 ようやっと、このせかいを、たべられる。


 おもいかえせば。こんかいのしょくじは、ひどく、てまのかかる、ものだった。


 ──きるがみね、ほうじ。

 もしも、あれに、やぶれなければ。もっとはやく、たべられたのに。


 ──ふぇりぱ、ふぇれす。

 もしも、あれに、じゃまだてされなければ。もっとはやく、たべられたのに。


 いまいましい。いまいましい。

 なんて、いまいましい、あくども。


 ──だけど。いまはむしろ、おれいをいいたい、くらい。


 ありがとう。ほうじ。

 あなたが、いたおかげで。このこは、わたしまでつづくみちを、みいだせた。


 ありがとう。ふぇりぱ。

 あなたが、いたおかげで。このこは、わたしまでつづくみちを、わたりきれた。


 はいいろの、けもの。あおいちの、けもの。


 ──このこを、くらえば。このこの、すべては、わたしのもの。


 そうすれば、きっと。きょうえん、などという、めんどうは、ふようとなる。

 ひとつ、ひとつ、ひろいあげる、ひつようなど、なくなる。


 あのとき、たべこぼした、すべてのかけらを。すぐにでも、たべつくせる。


 そうすれば、きっと。いえてくれる、はず。

 うえも、かわきも。いえてくれる、はず。


 ──ありがとう。


 ありがとう、ありがとう、ありがとう、ありがとう。


 いきてくれて、ありがとう。

 そだってくれて、ありがとう。


 かわいい、かわいい、わたしの、こ。






 わたしのために──ありがとう。





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