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五十番台階層クラスの魔石ひとつ喰らい尽くし、そのエネルギーをコンマ一秒足らずで完全放出。
攻撃圏内を呑む刹那の極光。
白煙と陽炎が立ち込め、やがて吹き流れた先には、更地と化した都心の一角。
「よし」
「じゃないわよ、このテロリスト」
突然の罵倒。
フェンス越しに『破界』の爪痕を苦々しく見下ろすリゼ。
どったのセンセー。
「死ぬほど甘く見積もって五千人コースね。執行猶予つくかしら」
「ツキヒコを収監出来る刑務所なんて無いし、実質無罪じゃない?」
言いたい放題だな貴様等。俺をなんだと思ってやがる。
こちとら、ちゃんと加減に加減を重ねて範囲を絞りまくったんだぞ。
「無関係な人間は一人も巻き込んでねぇよ」
少なくとも、生きてる奴は。
「あっそ。だからって、じゃあ良かった、とはならないと思うけど」
「被害総額の概算見積書出そうか? そっち関係詳しいよ、僕」
だろうね。
そして余計な御世話だ。
「娑婆い話は今度にしようぜ」
タイムイズマネー。予定が目白押し。
この先の九十分に何もかも懸かってる。最初の一歩で躓いてちゃ、笑い話にもならん。
「とりま三十秒。ウォーミングアップついでに片付けるぞ」
つーか、あいつ等は何やってんだ。
集合時間くらい守れや。五分前行動は社会人の常識だぞ。
「リゼと五十鈴は、シンギュラの護衛を」
「はいはい」
「霧の閂、朝焼けの蝶番、雲を鎖す錠。蟻の一穴、穿つに及ばず」
なんて?
「……あー、まあいい。ヒルダは俺と来い」
「え、ちょ、まっ」
黒鎧で覆われた足首を掴み、跳躍。
一瞬『豪血』を繰り出し、更に空気を蹴り付け、均したばかりの更地まで翔る。
着地し損ねたヒルダの上半身が、熱籠る地表へと埋まった。
「ボチボチ二〇六〇年代も終わろうって時に、また古典的な」
「ぷはっ! いやコントじゃないよ! キミの所為だよ!」
当たり屋みたいなこと言い始めた。
そんなに慰謝料が欲しいか。浅ましい奴め。
「『
性格的にシキ組で一番、護衛や防衛に不適合だから。
あと。
「お前とも因縁浅からぬ間柄だろうからな」
「うん?」
開けた場所に立ったことで激しさを増す攻撃。
弾き、躱し、防ぎ、捌き、潰しつつ、声を張り上げる。
「遠当てオンリーかよ! 五歳のガキじゃあるまいし、ちったぁガッツ見せやがれ!」
延髄目掛けて飛来する矢を掴み取り、スライダー気味に投げ返す。
四キロ後方、ビルの六十三階から俺を狙っていた射手の肩口を貫通。
それで隠れてたつもりか。馬鹿め。
「人数も居場所も残らず把握済みだ! 綺麗さっぱり消滅した十四人の仲間と同じ運命を辿りたくなけりゃ、遊び相手になってくれよ!」
頼むぜ、なぁ──
「──ブラックマリア!」
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