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「どうぞ。こちらギガ盛りパスタと三ポンドステーキ、その他諸々になります」
重量感たっぷりな品々を運んで来たウェイトレスが、そのまま俺の隣に座る。
と言うか。
「なんで居るんだ、u-a」
「たまたまです」
ほう。
「覚えの無い予約が入ってて、待ちを素通りで席に案内されたぞ」
「たまたまです」
ほうほう。
「まだ注文してねぇのに、頼もうと思ってた料理をピンポイントで持って来たのは」
「たまたまです」
あまりにも雑。それで押し切る気か。
未来予知能力者が宣うたまたまほど信憑性に欠ける台詞も無いもんだ。
別に構わんけどさ。
「庵も居ますよ。ほら」
カウンター越し、厨房から控えめに手を振ってくる五女。
姉妹の中でも特に男性人気が高い和系美少女。やたら店が混んでる主因。
やはり、と枕詞を置くべきか、社員にもシンギュラのファンは多い模様。
「食べたら後で感想を伝えてあげて下さい。貴方の味覚データに合わせて、一生懸命作っていましたから」
「左様で」
ステーキを噛み千切り、咀嚼する。
サシが殆ど入っていない赤身肉。
ソースの類は使わず、岩塩と黒胡椒だけ振ったシンプルな味付け。
強い炭火で表面を焼く程度に留めた、血の滴るようなレア。
うむ。
「美味い」
不安げに此方を見ていた庵へと、親指を立てて返す。
すると彼女、顔を赤く染めて奥に引っ込んでしまった。
「ああいう奥ゆかしさが、若い男にウケてる理由か」
リゼも少しは見習いたまえよ。
……いや。アイツが鉄面皮を崩したら、まず病気を疑うわ。
「月彦様」
ひと頻り食べ終え、寛ぐ俺の耳元に顔を寄せたu-aの、囁くような呼び掛け。
どったのセンセー。
「明日、皆様が戻られます」
そうか。予定通りだな。
「つきましては、夕刻頃に少々お時間を下さい」
了解。
「それと」
まだ何かあるのか。
「今夜、寝所に伺っても宜しいでしょうか?」
庵の爪の垢でも煎じて飲め。
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