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「お兄ちゃん、左脚できた?」
「今、塗り終わったとこだ」
シンギュラリティ・ガールズ四女、ロリ枠担当のΛ。
意外にもプラモ制作が趣味であるらしい彼女に付き合い、暇つぶしがてら聞いたことも無いアニメに登場する見たことも無いロボットを組み上げている最中である。
…………。
なんだこの……ホント何これ。
デザインが奇抜過ぎて、モチーフとか設計思想とか皆目見当つかん。
「完成したらジオラマに飾って、爆破させて遊ぼうねっ」
楽しみ方、ガチ過ぎるだろ。
「やあ月彦さん。これは奇遇だ、ご機嫌麗しゅう」
「うるわしゅー」
野暮用で開発部のフロアを彷徨いてたら、シンギュラ三女のLzaと遭遇した。
奇遇ってか明らかに待ち伏せられてたけれど、そこら辺は言わずが花か。
俺は空気の読める男。エアーリーディング検定十級。
「奇遇ついで、どうかな。一緒に食事でも」
アンドロイドに飲食機能を実装するのって、改めて考えると無駄に凄い技術だよな。
まあコイツ等の場合は生体部品も多いし、順当っちゃ順当な気がする。
「構わんが、先に用事を済まさせて貰うぞ」
ちょうど俺達の脇を通り抜ける数名の社員。
うち一人の首根っこを掴み、体内ナノマシンを守衛室と繋ぐ。
「藤堂だ。五十階のサーバールーム前で不審者を捕縛した。さっさと人員を寄越せ」
白衣の懐に隠し持った拳銃と記憶媒体を奪い、握り潰す。
首を締め上げ失神させ、床へ放り投げた。
「あと三人居る。捕まえたら付き合うぜ」
「う、うん……」
ったく。他部門の警備連中は何やってんだ。こういうのは向こうさんの仕事だろ。
こちとら社内に踏み入る前の段階で気付いてたぞ。ジオラマに爆薬を仕掛ける作業が忙しく、少し放っておいたらこのザマよ。
全員合わせて、やる気ゼロの俺未満とか、話にならん。
「……その、参考までに聞きたいのだけれど……いつもどうやって白黒の判別を?」
仕事の遅い同僚共に内心で溜息を吐いてたら、Lzaに奇妙な質問を受けた。
んなもん、見りゃ分かるに決まってる。
より正しくは、完全索敵領域へと入り込んだ瞬間に、か。
「息遣い、歩調、視線、心音、発汗量、持ち物。ああ、あと会話の内容とかだな」
これだけ判断材料が転がってて仕分けられないほど、間抜けに非ず。
「えっと……つまり、地上九十階、地下十五階建ての本社内に居る人間を、残らず把握してるってこと……?」
「まさか」
現在、素の状態での索敵範囲は差し渡し二キロ少々。樹鉄刀との融合直前の約二倍。
ビル一棟で収まるかよ。周辺一帯も込みだ。
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