709・閑話41






 地球に突き立つ、九九九の楔。

 異なる摂理を核に廻る、異界へと続く門扉。


 その最深淵。

 九つの閂に隔てられし、青く澄んだ水面。


 百階層と呼ばれる彼の地で、は静かな脈動を繰り返していた。


「ようやく、ここまで」


 葉を一枚も茂らせていない、巨大な樹。

 真っ白な──薄く罅割れた指先が、愛おしげに表皮を撫ぜる。


「……このうつわも、げんかいか。きるがみね、ほうじ、め」


 亀裂から滴り落ちる、青い血。

 熱を伴わない、凍るような雫。


「まあ、いい。どちらにせよ、あらたな、いれものは、ひつようだ」


 手元の腕輪型端末が淡く瞬き、空間投影ディスプレイを表示させる。


 映し出されたのは、塵煙の内に佇む、灰髪灰眼の偉丈夫。


「ああ。ああ、ああ、ああ」


 そして。

 指先で糸を紡ぐ、白皙と碧眼の少女。


「おなかがすいて、うえじにしそう」





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