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「体組織の再構築、完了と」
ついでに、より細かくアラクネの粘糸を張り直し、引き絞った際の接合精度を上げた。
作業にリゼの手を借りる時、絶えず全身を襲う痛みが更に増すと言われたが……何か問題あるのか、それ。
「いいね。キレが段違いだ」
特に、千切れた骨肉を遠隔で動かす時のレスポンス向上が著しい。
手刀で右腕を刎ね、適当な指遊びを何度か繰り返し、また繋ぐ。
少しだけ血を滲ませれば、そいつを吸って女隷も一緒に直るため、話が早い。
「……痛くないの?」
顔色の悪いリゼに、力無く問われる。
案の定、相当な綱渡りで『次元斬』を撃ったらしく、消耗具合が酷い。
圧縮鞄から
で。質問に答えるなら、だ。
「痛てぇに決まってんだろ」
度重なる『豪血』の行使は、五感と併せ、痛覚なども鋭敏化させている。
こいつを話すと何故か顔を顰める輩が多いけれど、別に不便は無い。
寧ろ鈍かったり、感じなかったりする方が問題だ。
完全索敵領域内の解析を図るにあたっては、痛みもまた重要な情報源なのだから。
「うえぇ……死ぬ、死にそ……うぶっ」
真っ青な顔色で横たわり、断続的にえづくヒルダ。
いっそ吐いちまった方がラクじゃねーかな。
「脳に演算装置を埋め込んでも、キツいものはキツいんだぞぉ……僕の想像に『呪血』なんか垂れ流してくれちゃってぇ……」
そいつは、そいつは。
「めんご」
「誠意が足りてないよ、誠意が……ぉえ」
まあ、お陰で助かった。
仮に八十階層の環境そのままで戦っていたら、狭過ぎて完全に御陀仏だった。
褒めて遣わす。
「五十鈴もナイスアシスト。流石、長くチームで活動してた奴は気配りが違うな」
「…………しゃ、謝辞には及ばぬでござる」
何故に武士テイスト。
ウケる。
ひとしきり息を整えた後、半ば原形を失った階層の中心部に立つ。
頭上を仰げば、視線の先には──赤とも黒ともつかない、真球。
リゼが『次元斬』で拵えた、俺の完全索敵も届かざる、全き断絶領域。
時間も空間も物理法則も、悉く現世から切り離された、謂わば人造の異世界。
「あの中、どうなってんだ?」
「無明無間。圧力と呪毒で充ちた、無限の斬撃が織り成す牢獄」
チョコバー片手、滔々と語るリゼ。
「オマケに体感時間だけ何万倍にも引き延ばしてあるから、肉体とのズレで殆ど動けないまま、死に至る責め苦をじっくり味わえる特別仕様」
「ひっでぇ」
お狐様に恨みでもあんのかよ。さては狸派だな。
ああ、いや。そもそも動物嫌いだったか。
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