697・Glass
「『
神経に染み付いた、時の流れが遅まる感覚。
思考、反応、瞬発──速度に関わる全てが、何倍にも引き上がる。
「『
それを八乗。
風も音も、光すらも追い越した、人間の識覚など根本から置き去ってしまう領域に達す。
視えず、聴こえず、感じず。
謂わば無へ投げ出されたに等しい、世の理を外れた袋小路。
生物の限界を超えようなどという試みを神が嘲笑っているかの如き、虚ろな景色。
「『ロックオン』」
故に対象捕捉のスキルで補う。
例え五感を振り切ろうと、一度でも認知した敵は決して逃さない。
「『リロードツール』」
深層を形作る石畳、持ち込んだ聖銀を素材とし、二十四発の弾薬を精製。
鳥獣系のクリーチャーに対する特効を備えた材質で造り上げた、獣狩りの銀弾。
更に。
「『黄泉比良坂』」
私自身、並び私の持ち物に『死』の概念を付与するスキル。
延いては一時的に冥府へと赴き、現世で降り注ぐ脅威から退く行為も可能だが、生半な素材では死を受け容れられず自壊するため、使いどころの難しいチカラ。
しかしその分、効力は絶大。
死を纏いし物品。命を奪うという目的ならば、これ以上の代物、そうそう無い。
「フォー・オブ・ア・カインド」
時間と空間が壊れた速度の中で、四丁拳銃を繰る。
普通なら、まともに動くことなど能わぬだろう。
けれど今の私は死んでいる。死者の時は進みも戻りもしない。
時空の暴風雨に呑まれようと、己を保てる道理。
「マックス、アガーテ、カスパール」
銃口を飛び立つ三発の弾丸。
射手たる私同様『
「『アカシンゴウ』」
静止。
慣性を孕んだまま、押し留める。
「クーノー、隠者、白薔薇、ザミエル」
プラス四発の発砲。
先んじ空中に固定した三発と衝突、軌道を変える。
──そして『アカシンゴウ』は、強い衝撃を受けることで効果を失う。
七方向より一点目掛け迫る、都合七発の
牙先が向かう果ては、言うに及ばず、白面金毛九尾の狐。
「デア・フライシュッツ」
着弾。骨肉を抉る手応え。
聞こえはせずとも、確かな苦悶の響きが、私の魂を震わせた。
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